研究課題/領域番号 |
24591924
|
研究機関 | 大阪保健医療大学 |
研究代表者 |
柴田 雅朗 大阪保健医療大学, 保健医療学部, 教授 (10319543)
|
研究分担者 |
日下部 守昭 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (60153277)
森本 純司 大阪医科大学, 医学部, 准教授 (90145889)
|
キーワード | テネイシンC抗体 / α-マンゴスチン / 乳癌 / 転移 / マウス / アポトーシス / 血管新生 / リンパ管侵襲 |
研究概要 |
当該年度は作用機序につながるパラメーターを中心に解析した。腫瘍細胞のアポトーシスをTUNELアッセイにて解析した結果、α-マンゴスチン投与群および複合投与群(テネイシンC抗体とα-マンゴスチン)で、アポトーシス細胞の有意な増加を示した。新生血管内皮のマーカーであるCD31を免疫組織学的に染色し、腫瘍内の血管密度を求めた。また、リンパ管内皮のマーカーであるpodoplaninを免疫組織学的に染色し、リンパ管侵襲を受けたリンパ管の数を求めた。その結果、腫瘍内の新生血管ならびにリンパ管侵襲の数ともに全ての治療群で有意な低下ないしはその傾向を示した。また、リンパ節や肺以外に副腎、腎臓、卵巣、子宮などにも転移が観察され、マウス1匹当たりの転移を見た総ての臓器数で解析すると、全ての治療群で、対照群に比較して、有意な減少が観察された。 【結論】ヒトと類似の転移スペクトラムを有する高転移性マウス乳癌モデルに対して、テネイシンC抗体とα-マンゴスチンは抗腫瘍効果を発揮し、特にリンパ節をはじめとする転移の抑制は臨床的に極めて意義の高い所見であると考えられた。これらの抗転移作用は、腫瘍内の血管新生の低下やリンパ管侵襲の抑制に起因するものと推測された。また、α-マンゴスチンでは腫瘍細胞にアポトーシスも誘導しており、これも抗転移作用に関与しているものと考えられた。しかし、テネイシンC抗体とα-マンゴスチンを複合することによる明らかな抗腫瘍作用の増強効果は示されなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は作用機序につながるパラメーターを解析する計画となっており、概ね計画通りに研究は進んだ。腫瘍細胞のアポトーシスとしてTUNELアッセイ、腫瘍内の血管新生の評価としてCD31免疫組織学的染色、リンパ管侵襲ではpodoplanin免疫組織学的染色を行い、それらを定量的に解析した。また、肺、リンパ節転移だけでなく、全身諸臓器の転移をみた臓器についても、マウス1匹当たりの転移個数として、解析した。今回観察された抗転移作用は、アポトーシスの誘導、血管新生の抑制あるいはリンパ管内への癌細胞浸潤の抑制が作用機序の一端として示唆され、目的は概ね達成できたと考えられた。国内の学会において、ここまでの成果を段階的に発表してきた。しかし、腫瘍細胞の増殖率の指標であるBrdUの染色性が悪く、その他の増殖マーカーであるKi-67でも試みたが、やはり染色性が良好ではなく、腫瘍細胞の増殖の評価が未だ遂行されていない。そこで平成26年度は、DNA polymerase deltaの作用に関わる増殖因子のPCNAを用いて増殖率を評価する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
腫瘍細胞の増殖の評価が未だであるので、PCNAに対する免疫組織学的染色を行い、腫瘍細胞の増殖率を解析する。パラフィン包埋された腫瘍組織からRNAを抽出し、リアルタイムPCRにて、腫瘍組織中のテネイシンC mRNA量を測定する。本研究課題で得られた成果を論文として取り纏め、国際的な学術雑誌に投稿する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初は当該年度は論文作成の予定はなかったが、マンゴスチンをテーマとした論文の投稿機会を得たので、論文作成をし、投稿した(Altern. Integ. Med., 2:8, 2013)。そのために論文投稿費用が発生し、前倒し請求を行った。 本研究課題で得られた成果をOriginal論文にし、その論文作成費用および投稿費用に充てる。
|