研究実績の概要 |
多発性内分泌腫症1型(MEN1)の責任遺伝子men1にコードされたタンパク質メニンが乳癌ホルモン療法剤アロマターゼ阻害剤の効果阻害因子となる可能性について検討した。これまでの研究でメニンはエストロゲンレセプター(ER)のエストロゲン結合部位に結合してERの転写活性を促進する新規のcofactor(共役因子)であることを明らかにし、臨床的意義を解析してきた。その結果メニン高発現を呈する乳癌症例は有意にタモキシフェン抵抗性を示すことを報告した(Imachi H, Yamauchi A, et al., Breast Cancer Res Treat. 2010; 122: 395-407)。今年度は乳癌ホルモン療法剤のうちステロイド系アロマターゼ阻害剤エキセメスタンを用いてがん集学的治療財団が2007年に実施開始した術前ホルモン療法の臨床研究JFMC34-0601に登録された110例のうち免疫組織染色可能な41例の摘出標本についてメニン発現を検討した。メニンの発現はH-Scoreで評価し、H-Scoreが0-100の陰性または弱陽性群が22症例、101-200の陽性群が12例、201-300の強陽性群が7例であった。H-Score中央値は100であった。まだ臨床データの開示手続きが完了していないため、アロマシンの効果との関連については臨床データを入手次第解析予定とした。 研究分担者の上野貴之氏の研究ではアロマシンとエンドキサンを用いた術前ホルモン療法に登録された症例の摘出標本を用いた解析でメニン発現はTUNEL法によるアポトーシスと有意な逆相関を認めた。この結果より乳癌組織におけるメニンは乳癌ホルモン療法の効果阻害予測因子となる可能性が示唆された。
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