研究課題/領域番号 |
24591928
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
角川 陽一郎 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん薬物療法研究部, 特任研究員 (60221173)
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研究分担者 |
深町 佳世子 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん薬物療法研究部, 特任研究員 (00626137)
島 礼 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん薬物療法研究部, 部長 (10196462)
西野 善一 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん疫学・予防研究部, 上席主任研究員 (70302099)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 乳がん / HER2 / ホスファターゼ / BRCA1 / PP6 / SNP |
研究概要 |
(1)HER2を基質とするホスファターゼと癌化との関係 我々は、乳がんの発症の原因にHER2ホスファターゼの遺伝子異常の存在を仮定して、乳がん組織における遺伝子変異の有無を解析した。その結果、HER2ホスファターゼの1つPTPN18の活性ドメイン内のWPD-loopモチーフに隣接してアミノ酸の変異を伴うSNP、PTPN18 (A604G)があることを見いだした。我々の仮説は、「PTPN18(A604G)によるアミノ酸変異 → WPD-loopモチーフを含むタンパクの構造変化 → 脱リン酸化酵素の失活 → HER2異常活性化 → 乳がん発生」である。現在、仮説の検証を行っている。 (2)BRCA1複合体に存在するホスファターゼ (PP6) の機能解明 BRCA1のリン酸化制御の破綻と、乳がんと関連を解明するために、複合体を形成している分子種を探索し、脱リン酸化酵素のPP6(protein phosphatase 6)がBRCA1と共沈することを明らかにした。ヒトの腫瘍化においてもPP6が重要な意義をもつことが示唆され、PP6の機能解明を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)HER2を基質とするホスファターゼと癌化との関係 我々が見いだしたSNP、PTPN18 (A604G)の頻度は、検討した症例においては、8例/145人であった。本SNPは、日本人の代表的なSNPデータベースである東大医科研のJ-SNPには登録されていなかった。一方、本SNPはNCBIのdbSNP(SNPデータベース)には登録されていた。しかしその頻度はわずか3例/629人であった。このデータと比較すると、当センター乳がん患者においては、本SNPの頻度が明らかに高いことが示された(P=0.0027)。したがって、PTPN18 (A604G)、が乳がん体質のリスクの1つである可能性があると考える。 (2)BRCA1複合体に存在するホスファターゼ (PP6) の機能解明 PP6をconditionalにノックアウトするための、ターゲティングベクターを作成し、ES細胞においてターゲティングした細胞を得た、さらにそれを用いて、キメラマウス、ヘテロマウスの作成に成功している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)HER2を基質とするホスファターゼと癌化との関係 PTPN18(A604G)と乳がん罹患率との関係の検討:一般日本人女性および乳がん患者のゲノムDNAに関して、さらに数を増やして解析する。 PTPN18 (A604G)のシグナルへの影響の解明:PTPN18 (A604G)の酵素活性、HERのシグナルへの影響をin vitroと、細胞レベルで解析する。 (2)BRCA1複合体に存在するホスファターゼ (PP6) の機能解明 PP6 欠損マウスのフェノタイプを解析する。患者の癌組織におけるPP6関連タンパクの遺伝子の異常の有無を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
主にヒトゲノムの解析、シグナル伝達の解析のための消耗費、マウスの飼育代に用いる。
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