研究課題/領域番号 |
24591931
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中野 徹 東北大学, 大学病院, 助教 (50451571)
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研究分担者 |
亀井 尚 東北大学, 大学病院, 講師 (10436115)
中川 敦寛 東北大学, 大学病院, 助教 (10447162)
仲井 正昭 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (20431603)
宮田 剛 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60282076)
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キーワード | 食道 / 粘膜下層剥離術 |
研究概要 |
昨年度に材料工学的検討ののちに試作した内視鏡用パルスジェットメスを上部消化管内視鏡に導入し、全身麻酔下豚に対して食道粘膜下層剥離術(ESD)を施行した。従来機器として、国内海外で広く使用されている高周波電気メスと比較してその優位性を検証した。1、内視鏡用パルスジェットメス(カテーテル)を用いて豚食道ESDを施行し、機器の操作性、安全性、手術時間を評価した。周術期に問題となる合併症を認めず安全に施行することができた。平均切除時間は高周波電気メスで31.3±16.4分、パルスジェット群50.7±29.9分とパルスジェット群にやや時間がかかる傾向があったが有意な差を認めなかった。2、急性期評価:剥離面の損傷範囲を病理組織学的に解析した。豚食道ESDで得られた摘出標本の粘膜下層面の剥離距離に対する熱損傷距離の比を計算し評価した。平均熱損傷割合は高周波電気メスで15.09±20.06%、パルスジェット群で1.01±4.29%(P<0.05)と有意にパルスジェット群で減少していた。3、慢性期評価:パルスジェットと高周波電気メスを用いて豚ESDを施行し、一週間後に内視鏡検査で再生粘膜と狭窄の程度を評価した後、犠牲死させ組織学的に解析した。パルスジェット群で炎症細胞の数が少なく、線維化が少ない傾向が認められた。 以上の動物実験によりパルスジェットを用いて安全に食道ESDが施行できることとパルスジェット群の方が従来の高周波電気メスに比較して粘膜下層の熱損傷が少ないことが明らかとなった。組織に対する熱侵襲が軽減されることで出血や穿孔といった合併症を回避できる可能性や切除標本における深部断端においてより正確な病理診断を可能にする可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標は昨年度に材料工学的かつ流体力学的検討を行い試作したパルスジェットメスを動物実験に用いて従来機器を使用したときとの比較を行うことである。具体的には1、内視鏡用パルスジェットメス(カテーテル)の操作性、安全性、手術時間を評価する。2、急性期評価:剥離面の損傷範囲を病理組織学的に解析する。3、慢性期評価:一週間後に内視鏡検査で再生粘膜と狭窄の程度を評価した後、犠牲死させ組織学的に解析する。ことであり、それぞれの項目について動物実験を行うことができたためおおむね順調に進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
材料学的かつ流体力学的検討と動物実験により食道粘膜下層剥離術を施行するための至適な条件と内視鏡操作による安全性が確認されている。また摘出標本による病理学的検討により熱損傷の軽減と創傷治癒への良好な影響が示唆されている。今後は当院での倫理委員会で承認されたヒト食道への応用を目指していく予定である。臨床応用に先立って手術で摘出された食道切除標本に対して切開実験を行い、ヒト食道における切開性能と血管温存能を含めた安全性を検討していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度計画された「3、慢性期評価の実験(パルスジェットと高周波電気メスを用いて豚ESDを施行し、一週間後に内視鏡検査で再生粘膜と狭窄の程度を評価した後、犠牲死させ組織学的に解析する)」においてパルスジェット群で炎症細胞の数が少なく、線維化が少ない傾向が認められたが、当初はこれを定量的解析を行う予定であったが、研究協力者の異動の理由で翌年度に持ち越して施行することにした。 パルスジェットメスを用いた食道粘膜下層剥離術後の慢性期評価を定量的に行う予定である。具体的には、パルスジェットと高周波電気メスを用いて豚ESDを施行し、一週間後に内視鏡検査で再生粘膜と狭窄の程度を評価した後、犠牲死させ組織学的に解析する。その際病理標本において炎症細胞の数を視野ごとに計数し、両軍で比較する。さらに線維化の定量的比較を行うために画像解析ソフトを用いて線維化面積を定量し比較検討する予定である。
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