研究課題/領域番号 |
24591933
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
林 秀樹 千葉大学, フロンティアメディカル工学研究開発センター, 教授 (20312960)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | インドシアニングリーン / 光線力学療法 / 光線温熱療法 / ハプテン |
研究概要 |
本研究課題の中核をなすリポソームと近赤外蛍光色素を組み合わせたトレーサーに関しては、従来の水溶性インドシアニングリーン(ICG)をリポソームに組み込んだものが、十分にリンパ系の動態解析に有用との報告がある(Rroulx et al. Cancer Research 70(18) 7053-62, 2010)。そこでまず、われわれの開発した新規近赤外蛍光色素である脂溶性ICG(ICG8)の生体内動態解析における有用性を旧来の水溶性ICGと比較することとした。 等モルのICG水溶液、ICG-リポソーム、ICG8-リポソームをそれぞれマウスのfootpadに投与しリンパ系動態解析を行ったところ、ICG水溶液、またはICG-リポソームを投与したマウスは、投与後60分までに一次リンパ節ばかりではなく、肝臓にも強い集積を認めたのに対し、ICG8-リポソームを投与したマウスでは投与後120分まで、肝臓への集積は認めなかった。このことは、水溶性ICGを用いたリポソームでは、生体内で無視できない量のICG分子がリポソームから解離し血液中にも漏出することを示しており、やはり脂溶性ICGは腫瘍選択性の高い薬物送達システムを構築するために必要不可欠なものと考えられた。 また、本研究課題で提案している薬物送達システムの光線力学・温熱療法における有用性の基礎的な検討をマウスモデルにより行った。扁平上皮がん細胞株をマウスの下肢に局注し、10日後ICG8-リポソームにシスプラチンを封入したものを全身投与、腫瘍への近赤外光照射を行った。照射後の腫瘍体積はICG8-リポソーム+シスプラチン< ICG8-リポソーム < controlとなり、本薬物送達システムを用いた悪性腫瘍治療においては光線力学療法と光線温熱療法の相乗効果が見込めるものと推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請書に記載した研究協力者の大学院生藤戸寛迪が個人的な事情により昨年度初頭に退学したため、担当予定であった蛍光化リポソームのDNP内包化効率及び放出効率の検討に遅滞を生じた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究の過程で蛍光化リポソーム中の蛍光色素モル濃度と蛍光励起効率の関係に関して、in vitroとin vivoで解離があることが明らかになった。これまでin vitroのデータを元に蛍光化リポソームの設計を行ってきたが、この解離の原因を明らかにし、in vivoにおいて最も効率よく蛍光励起及び温熱療法を行うことのできる蛍光化リポソームの再設計を行う。 また、平成24年度に協力を得ることができなくなった大学院生の代わりに新たな研究協力者(大石知、工学部学生)を得たため、DNPの蛍光化リポソームへの内包化効率及び放出効率の検討を積極的に推進する。すなわち、蛍光化リポソームの製造過程においてジニトロベンゼンスルホン酸(DNBS) あるいはジニトロフルオロベンゼン(DNFB)を添加し、カラム処理によりDNP を担持あるいは内包した蛍光化リポソームを精製、含有効率を検討する。各試薬の配合比や温度条件、反応時間等の調整を行い、最大のDNP含有率の得られる至適条件の検討を行う。 さらに本蛍光化リポソームシステムが担持あるいは内包する薬剤をどの程度の効率で培養細胞へ賦与可能かを検討する。すなわちAH130 細胞等の培養液中に、DNPを担持・内包した蛍光化リポソームを添加、近赤外光を照射し培養細胞のDNP 修飾効率を検討する。DNP 修飾は抗DNP 抗体を用いたフローサイトメトリー(FCM)により評価を行う。その結果に基づき、最も高い修飾効率の得られる蛍光化リポソームの至適調整法を決定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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