研究課題
① われわれの研究室で開発され、本研究使用されている脂溶性蛍光色素(アルキル化インドシアニングリーン,ICG-C18)は特許出願中であったが、平成13年中に国内製薬企業に有償で権利譲渡された。② DNP内包化蛍光リポソーム(DNBS-LP-ICG-C18)のvitroにおける近赤外光照射によるDNP放出効率の検討を行った。平成21~23年度の科学研究費補助金による課題「蛍光化リポソームを用いたダブルイメージングによるセンチネルリンパ節診断法の開発」で確立された、160μmol/Lの蛍光化リポソーム作製過程において、10mg/mlのDNP(DiNitrobenzene Sulfonic Acid)を加えリポソーム内包化を行ない、ゲル濾過により遊離DNPの除去を行ったところ、最大でおよそ6μg/mlのDNP内包化蛍光リポソームが作製可能であった。このDNP内包化蛍光リポソームを96穴プレートに分注し、われわれの研究室にて開発された近赤外光照射装置(特願2012-103379)を用いて近赤外光の照射を行った。照射後のサンプルからゲル濾過により遊離したDNPを抽出し、近赤外光照射によるDNPの放出効率の検討を行った。その結果10分近赤外光照射で約25%、20分で約30%、30分で約35%であった。③ 鳥取大学獣医学部獣医外科学の岡本芳晴教授との共同研究により、昨年度の研究成果で得られたシスプラチン内包化LP-ICG-C18を用い、家畜犬を対象とした光線力学療法を行った。切除不能の各種腫瘍において、従来の温熱療法と比較し、有意な腫瘍の縮小と生命予後の改善を認めた。
3: やや遅れている
本年よりvitroの主たる実験を担当する大学院生が卒業により交代となり、蛍光化リポソームの安定した作製が可能となるまでに時間を要した。また、先行した科学研究費補助金の課題「蛍光化リポソームを用いたダブルイメージングによるセンチネルリンパ節診断法の開発」(平成 21~23 年度)の成果を報告した論文の投稿先のジャーナルから追加実験の要求が有り、相応の時間を要した。本研究課題は先行研究の成果を基盤としているため、確固たる研究基盤を構築することは本研究の成果を期待する上で必須であると考えた。
平成25年度の成果に基づき、本DNP内包化蛍光リポソーム(DNBS-LP-ICG-C18)が担持あるいは内包するDNPをどの程度の効率で培養細胞へ賦与可能かを検討する。すなわち各種消化器癌細胞株の培養液中に、DNBS-LP-ICG-C18を添加、近赤外光を照射し培養細胞のDNP修飾効率を検討する。DNP修飾は抗DNP抗体を用いたフローサイトメトリーにより評価を行う。また、平成24年度の本研究において行った、シスプラチン内包化蛍光リポソームによる抗腫瘍効果の評価の際に用いた動物モデルにDNBS-LP-ICG-C18を投与、標的部位(主病巣あるいは転移病巣)を摘出、前項と同様のFCMを用いた評価を行う。また、あらかじめ大豆油と共にDNPを投与し、抗DNP細胞性免疫を獲得した宿主に対し、DNP担持・内包蛍光化リポソームを投与、標的部位の炎症反応の惹起の有無をみる。また、この宿主より脾臓を摘出、抗腫瘍特異的免疫誘導が行われているかどうかの評価を行う。平成25年度の研究により得られたDNBS-LP-ICG-C18のDNP内包化効率が予想より低いため、リポソームとの親和性がより高い腫瘍免疫修飾物質であるarabinomannanについてもリポソーム内包化・放出効率の検討を行う。
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