研究概要 |
食道扁平上皮癌は、消化器癌の中でも特に予後不良な難治癌として知られている。近年、新たな癌治療の選択肢として分子標的治療薬が開発され、抗HER2抗体であるtrastuzumab(HerceptinTM)や、抗HER1抗体(ErbitaxTM)が臨床応用されている。またHER family(HER1,HER2,HER3,HER4)はヘテロダイマーを形成し、細胞増殖に働くとされ、特にHER3はHER2とのヘテロダイマーを形成することにより、強い活性をもつと考えられている。本研究は、食道扁平上皮癌におけるHER2とHER3の関連を調べ、抗HER3抗体の食道扁平上皮癌に対する抗腫瘍効果を検討により、食道癌の新たな治療体系を確立することを目的とする。 本年度は食道扁平上皮癌細胞株であるTE-1, TE-2, TE-3, TE-4, TE-5, KYSE30, KYSE50, KYSE70, KYSE110のHER3発現を、抗HER3抗体を用いてフローサイトメトリーにて測定した。その結果、KYSE30がMFI 45.97と最も高発現であった。またKYSE50, TE-4がそれに次いで高発現株であった。HER3の中発現株はTE-3, TE-5, TE-2であり、低発現株としてはTE-1, KYSE110であった。なお、KYSE70はほとんどHER3の発現を認めなかった。そこでこれらの食道扁平上皮癌細胞株に対する抗HER3抗体の効果を検討すべくMTT法を用いて細胞増殖抑制効果を、Annexin/PI法を用いてapoptosis誘導能を測定したが抗HER3抗体による変化は認められなかった。
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