研究課題
REIC/Dkk-3 は不死化した細胞でその発現が低下し、Dkk ファミリーに属する細胞外分泌タンパク質である。アデノウイルスを用いて REIC/Dkk-3 を強制的に発現させると、小胞体ストレスを介してがん細胞のみアポトーシスが誘導される。しかし、REIC/Dkk-3 の正常な生理活性は不明で、特異的受容体もはっきりと分かっていない。またこれまでの予備実験から、REIC/Dkk-3 の制御因子として感染などのストレスで分泌される炎症性サイトカイン TNF-αが候補にあがった。今年度はこの TNF-αによる REIC/Dkk-3 発現の制御について検討した。TNF-αを100ng/mLの濃度で正常ヒトケラチノサイトに添加したところ、REIC/Dkk-3 の発現が低下した。Ki-67 免疫染色法および MTT アッセイにおいて、TNF-αの添加により正常ヒトケラチノサイトの細胞増殖が促進される傾向を示し、それに応じて細胞数が増加することが確認された。さらに最新の成果として、皮膚組織ではケラチノサイトが分泌する REIC/Dkk-3が血管内皮細胞の遊走と血管形成を抑制している結果が得られた。表皮幹細胞は炎症などのストレスに応答して炎症性サイトカイン TNF-αを分泌するが、その結果として組織形成に大きく関わる血管内皮細胞の挙動に大きな影響を与えているとしたら、非常に有意義な発見と言える。
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J Biol Chem
巻: 289 ページ: 23389-23402
10.1074/jbc.M114.573071