研究課題/領域番号 |
24591948
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
岩上 志朗 熊本大学, 医学部附属病院, 特任助教 (70530153)
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研究分担者 |
馬場 祥史 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 講師 (20599708)
渡邊 雅之 公益財団法人 がん研究会, がん研有明病院, 食道担当部長 (80254639)
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キーワード | LINE-1 / エピジェネティクス / メチル化 / 胃癌 / 予後因子 / Pyrosequence |
研究概要 |
ゲノム全体の低メチル化(=LINE-1の低メチル化)は、癌において重要なエピジェネティックな変化であるが、胃癌におけるLINE-1メチル化の意義を検討することが本研究の目的である。胃癌切除症例における癌部および周辺正常胃粘膜のLINE-1のメチル化レベルを測定し、臨床病理学的因子との相関を検討した。当院でR0の胃切除を行った胃癌203例を対象とした。切除標本のプレパラートより抽出したDNAを用いて、bisulfite処理とpyrosequence technologyにてLINE-1のメチル化レベルを解析し、その後臨床病理学的因子との関連を調べた。 癌部のLINE-1メチル化レベルは11.6 %~97.5 %(平均値71.4 %)であった。同一症例の正常胃粘膜と癌部で比較したところ、LINE-1メチル化レベルは癌部で有意に低下していた(p<0.0001; N=74)。また、Stageと癌部のLINE-1メチル化レベルとの間には相関関係を認めなかった。LINE-1のメチル化レベルと予後との関係性を検証した。カプランマイヤー法で、全生存率を比較したところLINE-1低メチル化群は高メチル化群に比べ優位に予後不良であった(log-rank p=0.029)。 胃癌症例においても、癌部におけるLINE-1の低メチル化が認められた。また、LINE-1のメチル化は予後因子になる可能性が示唆された。このことから、胃癌LINE-1メチル化レベルは、胃癌の予後予測因子となりうることが示された。この結果を示した論文は、Gastric Cancerに採択された。 次に、胃癌細胞株6例(AGS, KATO-III, MKN1, NUGC-3, NUGC-4にてLINE-1メチル化レベルをパイロシークエンス法にて測定した。食道癌細胞株では22.83%~67.03%、胃癌細胞株では31.50%~78.56%と様々な値を示した結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書に記した予定通りに研究は遂行され、意義深い結果が得られた。これらの結果は、Gastric Cancerに既に採択されている。
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今後の研究の推進方策 |
胃癌細胞株を用いたIn Vitro assayを行う。胃癌細胞株の低メチル化株と高メチル化株に分類し、細胞浸潤能(invasion assay)、増殖能(proliferation assay)、抗アポトーシス作用(flow cytometory)、抗癌剤感受性 などにおいて、両株に差があるかを検討する。また、real-time PCRを用いてLINE-1メチル化レベルとLINE-1mRNAの発現の関係を調べる。In vitro assayの結果をin vivoで確認する。マウスのtail veinから胃癌細胞株(低メチル化株及び高メチル化株)を注入することにより、肺転移モデルを作成する。そして、抗癌剤治療を行い、LINE-1メチル化レベルと治療効果、予後改善に差があるかを検討する。また、xenograftモデルにおいても、治療効果を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
試薬等、当初の想定より比較的安価にて購入できたため。 胃癌細胞株を用いたIn Vitro assay、およびその結果をふまえたin vivoでの実験を行う。 研究費はそれらの実験に使用する試薬等消耗品の購入や、実験結果のデータ管理、関連書類のファイリング等を行ってもらうための人件費に充てたいと考える。
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