研究課題
ゲノム全体の低メチル化(=LINE-1の低メチル化)は、癌において重要なエピジェネティックな変化であるが、当院で胃切除を行った胃癌203例を対象とした癌部および周辺正常胃粘膜のDNAを、bisulfite処理とpyrosequence technologyにてLINE-1のメチル化レベルを解析し、その後臨床病理学的因子との関連を調べた。癌部のLINE-1メチル化レベルは11.6 %~97.5 %(平均値71.4 %)であった。同一症例の正常胃粘膜と癌部で比較したところ、LINE-1メチル化レベルは癌部で低下していた(p<0.0001)。Stageと癌部のLINE-1メチル化レベルとの間に関係を認めなかった。全生存率を比較したところLINE-1低メチル化群は高メチル化群に比べ優位に予後不良であった(log-rank p=0.029)。LINE-1メチル化レベルは、胃癌の予後予測因子となりうることが示された。この結果を示した論文は、Gastric Cancerに採択された。また、胃癌発生に関与する菌であるH.pyloriの感染とLINE-1メチル化の関係について検討した。まず、胃癌切除症例における、周辺正常胃粘膜のLINE-1低メチル化とH.pylori感染には有意な関係性を認めた(P=0.026)。また、前向きに採取した20例の非癌患者の正常胃粘膜でも同様の関係性を認めた(P=0.01)。LINE-1メチル化レベルはH.pylori感染による胃癌発生におけるepigenetic field defectのマーカーとなりうる可能性が示唆された。この結果を示した論文は、Medical Oncology (2015 Apr)に採択された。今回の結果は患者別の個別化治療や胃癌の早期診断に貢献できる可能性があり、非常に臨床的意義があると考えられる。
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