研究課題/領域番号 |
24591950
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
渡邊 雅之 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 准教授 (80254639)
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研究分担者 |
石本 崇胤 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 助教 (00594889)
馬場 祥史 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (20599708)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 食道扁平上皮癌 / 化学療法感受性 / microRNA / miR-223 / FBXW7 / miR-21 / exosome / RNP2 |
研究概要 |
我々は、食道扁平上皮癌切除症例の癌部と非癌部の組織を用いて、microRNA(miR)-223の発現とF-box and WD repeat domain-containing 7(FBXW7)の発現の関連を調べ、miR-223が癌部において非癌部より高発現していること、食道癌部におけるmiR-223の発現とFBXW7の発現が逆相関することを明らかにし、更にmiR-223高発現の食道癌症例は有意に予後不良であることを明らかにした。また食道癌細胞株にmiR-223を高発現させるとFBXW7の発現が低下し、逆にmiR-223の発現を抑制するとFBXW7の発現が更新することを示した。FBXW7は化学療法感受性や癌幹細胞性に関与することが注目されており、食道癌におけるmiR-223の発現は化学療法感受性の予測因子となる可能性が考えられる。 一方、我々は食道癌患者の血清中又は血清から抽出したexosome中のmiR-21の発現について検討を行った。今回、食道癌患者の血清ならびに血清中のexosomeにおいては健常人に比較してmiR-21の高発現が認められることを明らかにし、また、DCF療法前後の血清miR-21の発現を比較すると、化学療法の奏功例ではmiR-21が有意に低下し、非奏功例では変化が認められないことを明らかにした。この結果は血清中あるいは血清から抽出したmiR-21の発現が化学療法感受性のマーカーとなりうることを示唆している。 また術前にDocetaxelを含む化学療法を施行した食道扁平上皮癌症例の治療前生検組織におけるRibophorin II (RPN2)の発現と化学療法の効果について検討し、RPN2陰性例では化学療法の感受性が高いことを示した。さらに食道扁平上皮癌細胞においてRPN2の発現を抑制するとDocetaxelに対する感受性が向上することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
食道扁平上皮癌において化学療法感受性に関与する可能性のあるmicroRNAを同定することができた。また食道癌患者の血清中におけるmicroRNAの変化が治療感受性のマーカーとなりうることも明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
in vitroにおいてmature miRもしくはanistense-oligonuculeotideを用いて食道癌細胞内へtransfectionを行い、miR-223のgain of functionもしくはloss of functionの細胞を構築する。これらの細胞に各種Docetaxel、Cisplatin、5-FUを含む各種抗がん剤を作用させ、miRの発現レベルと感受性の関連が再現できるか否かを検証する。またmiRレベルの機能制御を軸に、癌細胞増殖・転移活性機能解析を行う。またFBXW7のgain of function、loss of functionにより化学療法剤に対する感受性が変化することを証明する。 術前化学療法を施行した食道扁平上皮癌症例の術前生検組織におけるmiR-223、FBXW7の発現と化学療法の効果の比較を行い、miR-223およびFBXW7が臨床検体においても化学療法感受性のマーカーとなりうることを明らかにする。 in vitroにおいて低濃度の抗がん剤を持続的に暴露することにより、抗がん剤耐性株を樹立する。これらの細胞と親株の間でのmiR発現を比較し、同定された感受性予測miRの発現変化を検証する。また、anti-miRを作用させたときの感受性の変化、ターゲット遺伝子の発現の変化を検討し、耐性克服の可能性を明らかにする。 親株と抗がん剤耐性細胞株を移植したマウスXenograft modelを用いて抗がん剤による治療実験を行い、in vivoでの抗がん剤感受性の差異とmiRの発現レベルを解析する。その後にanti-miRを投与することによる感受性の変化、ターゲット遺伝子の発現の変化を検討し、治療応用の可能性を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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