研究課題
本研究において我々は、Docetaxel、cisplatin、5-fluorouracilによる術前化学療法(DCF療法)を施行した食道扁平上皮癌症例を対象に、治療前生検組織におけるmicroRNAによる治療感受性予測の可能性を明らかにすることを目的とした。平成25年度には術前DCF療法施行例の臨床成績を解析しその有用性を報告した。また、臨床症例を前向きに蓄積するとともに、治療前生検の新鮮凍結標本の収集を進めた。基礎的研究においては、食道癌部においてmicroRNA (miR)-223が高発現し、FBXW7の発現制御を介して化学療法感受性に関与すること、食道癌組織におけるRibophorin II (RPN2)発現がDocetaxelに対する感受性の予測因子となることを明らかにした。また、化学療法耐性機序の一つと考えられるがん幹細胞に注目し、間質の腫瘍関連マクロファージ(TAM)とがん幹細胞マーカー発現との関連を調べた。この結果、がん幹細胞マーカーの一つと考えられるBmi1の発現を負に制御するmiRとしてmiR-30e*を同定した。TAMはmiR-30e*を介してBmi1の発現を制御し、腫瘍増殖やsphere形成能の亢進に関与することが示唆された。一方、治療抵抗性に関与するCD44の発現を制御するmiRとしてmiR-328を同定した。
2: おおむね順調に進展している
食道扁平上皮癌に対する術前治療としてのDCF療法の有用性を明らかにした。また、治療感受性に関与する可能性のある複数のmiRを同定した。
食道扁平上皮癌の治療前生検凍結標本からRNAを抽出し、治療感受性に関与するmiRの発現について検討する。in vitroにおいてmature miRもしくはantisense-oligonucleotideを食道がん細胞にtransfectしmiRのgain of functionもくしはloss of functionモデルを構築して化学療法感受性への影響を明らかにする。また、抗がん剤の持続暴露による抗がん剤耐性株を樹立し、miR発現の変化を検討する。
研究代表者が2013年8月1日付で熊本大学消化器外科学よりがん研有明病院に移動となりましたため、研究が一時中断いたしました。また、研究費の移動にも時間を要したため、当該年度での支出が少なくなり、次年度使用額が発生しております。がん研有明病院において新しい研究室をセットアップし、本研究を継続推進するため、翌年度分の助成金と合わせて使用させていただきます。
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