研究課題/領域番号 |
24591960
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
竹内 裕也 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (20265838)
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キーワード | 食道癌 / ケモカイン / ケモカインレセプター / 悪性度 |
研究概要 |
癌-宿主間のケモカインネットワークに着目し、平成24年度に引き続き以下のような研究を行った。1)食道扁平上皮癌切除例における食道癌組織中のCXCR4とCXCL12の発現を検討したところ、CXCL12陽性例・CXCR4陽性例はそれぞれ細胞増殖の指標であるMIB-1 Indexが陰性例と比較して有意に高く、CXCL12陽性例は有意に術後無再発生存割合が不良であった。2)食道扁平上皮癌細胞株TE4をヌードマウス背部に皮下注し、CXCR4阻害薬(AMD3100)を定期的に静注したところ、AMD3100投与群で腫瘍増殖が有意に抑制された。3)食道癌細胞株CXCR4発現株(TE4)培養上清にCXCL12を添加すると、細胞増殖が有意に亢進した。一方このTE4にCXCL12発現プラスミドを遺伝子導入し、CXCL12高発現株を作成したところ、CXCL12は培養上清中に高濃度に検出され、細胞増殖は有意に亢進した。これらの細胞増殖亢進はAMD3100投与で有意に抑制されたことから、食道扁平上皮癌の増殖にはCXCL12/CXCR4のparacrineだけでなくautocrine systemが関与していることが示唆された。4)上記1)-3)について平成25年度に確認実験を行い、現在論文作成中である。5)食道扁平上皮癌切除例79検体におけるCXCR2とCXCL8(IL-8)の発現を検討したところ、CXCR2(+)CXCL8(+)例(26例)は腫瘍の進行度と相関し、最も予後不良であることが明らかとなった。腫瘍組織中のCXCR2(+)CXCL8(+)例は患者血清IL-8濃度、CRP、FDP、Fibrinogen値が有意に高値を示した。この結果を昨年論文報告した(Ogura M, Takeuchi H, et al. Surgery, 2013)。6)食道扁平上皮癌切除例59検体におけるケモカインレセプターCXCR2・CXCR4・CCR7の発現を調べたところ、Receptor発現数が増加すると無再発生存率、全生存率ともに有意に不良となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
食道扁平上皮癌におけるケモカインネットワークの腫瘍学的な意義を明らかにしつつある。従来CXCR2発現のみが、固形癌の発育進展に関与すると考えられてきたが、食道癌においてはこれまでの検討でリガンドであるCXCL12発現が患者予後に関与しており、かつCXCL12-CXCR2間のautocrineが腫瘍伸展に重要であることを明らかにした。また他の重要なケモカインネットワークとしてCXCR2-CXCL8(IL-8)にも着目し、これらの臨床病理学的意義を明らかにした。さらにこれらは、AMD3100のような新規薬剤によって腫瘍抑制効果が得られることも明らかになり、当初の目標である悪性度診断の指標としてだけでなく、治療標的となりうることが示唆される。ケモカインレセプタープロファイルについては、これを調べることにより既存の臨床病理学的因子を超えた新しい予後予測因子になりうることが期待される。今後、これらの結果を論文化するとともに、悪性度診断、治療への応用をさらに模索していく。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年―26年度基盤研究C「ケモカインネットワークに着目した食道癌の新しい悪性度診断と治療法の開発」(研究代表:竹内裕也)により、これまでの研究を継続する。 CXCL12-CXCR2間あるいはCXCR2-CXCL8(IL-8)間のautocrine、paracrineのメカニズムとその意義を検討する。 さらに食道扁平上皮癌臨床検体におけるケモカイン(CCL21, CXCL12, IL8)・ケモカインレセプター(CCR7, CXCR4, IL8 receptor)のプロファイルと臨床病理学的因子や予後、化学療法や化学放射線療法の治療効果との関連について詳細に検討を行い、臨床上有用なケモカインプロファイルの開発に着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は旅費、人件費・謝金を計上したものの、まったく使用しなかった。また平成24年度に購入した抗体、試薬、細胞培養機器を継続して使用することで、物品購入の節約が可能となり、次年度使用額583,995円が生じた。 平成26年度は主に切除検体、in vitroと動物モデルを用いた研究を行い、食道扁平上皮癌細胞におけるケモカインレセプターの発現を確認し、その機能実験、機能阻害実験を行う。また臨床検体での検証を行い、癌-宿主間のケモカインネットワークが、臨床特性と相関するか否かを明らかにする。このためPCR primer・試薬費用や、免疫染色用抗体・試薬費用、細胞培養機器・培養液等の購入費用が主となる。また食道癌転移動物モデルを用いた転移抑制実験を行うため、ラット、マウスの購入費用を計上する。 調査研究費、成果報告費用としての国内・外国旅費を計上する。また謝金、その他は必要最小限とする見込みである。
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