研究課題/領域番号 |
24591962
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
安田 卓司 近畿大学, 医学部, 准教授 (10324782)
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研究分担者 |
塩崎 均 近畿大学, 医学部, 教授 (70144475)
今本 治彦 近畿大学, 医学部, 教授 (80351609)
今野 元博 近畿大学, 医学部附属病院, 准教授 (00278681)
新海 政幸 近畿大学, 医学部, 講師 (80340793)
安田 篤 近畿大学, 医学部, 講師 (60351615)
白石 治 近畿大学, 医学部附属病院, 助教 (70388536)
岩間 密 近畿大学, 医学部, 講師 (20548648)
錦 耕平 近畿大学, 医学部附属病院, 助教 (90441039)
加藤 寛章 近畿大学, 医学部附属病院, 助教 (30460900)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | P53 / Ser46 / リン酸化 / 遺伝子変異 / 治療効果予測 / 個別化 / 食道癌 / apoptosis |
研究概要 |
本研究は、p53の遺伝子変異の有無と治療後のSer46のリン酸化の有無をbiomarkerとした食道癌術前治療の個別化の確立を目的とした研究である。p53 Ser46のリン酸化を臨床でみたデータはなく、CRTまたは化学療法開始後のSer46リン酸化の至適測定時期を明らかにするため、先ずは基礎実験を行った。食道扁平上皮癌9株 (KYSE30, KYSE50,KYSE70, KYSE150, KYSE170, KYSE180, KYSE220, KYSE270, T.T)よりDNAを抽出し、p53遺伝子のExon2~11における変異の有無をdirect sequenceで調べた。さらにそれら9株に対してStratalinker 1800 (Stratagene, La Jolla, CA, USA)を用いて紫外線20 J/m2 を 30秒間照射してDNAを損傷させ、経時的にp53蛋白の発現、p53のリン酸化(Ser46部位)、 p53のアセチル化(Lys382部位)、 及びapotosisの誘導(cleaved-PARPの出現)をWestern blotでみた。 結果は、9株中KYSE30, KYSE70, T.Tの3株でp53遺伝子変異を認めた。p53野生株6株中では、4株においてUVCによるDNA損傷によりSer46のリン酸化を照射後約1時間から認め、6時間目にはapotosisが誘導されていた。残り2株においては、p53野生型であってもSer46はリン酸化されず、apotosisも誘導されなかった。つまり、予想通り、p53野生型であってもSer46のリン酸化の有無で治療効果に違いがでる可能性が示唆された。また、細胞実験においては、UV照射後約1時間でSer46はリン酸化されることも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来ならば今年度の前半で基礎実験を終了し、そのデータを基にプロトコールを作成し、倫理委員会へ申請・承認後、既に臨床試験を開始している予定であった。しかし、上記の実験の環境作りと細胞の購入、培養、そして実験条件や手技の確立などにやや時間をとられ現在に至っている。しかし、当初の我々の仮説、つまり、p53野生型であっても実際の活性型であるSer46のリン酸化の誘導の有無でapoptosisの誘導に違いがあることが証明され、非常に有意義であったと考えている。倫理委員会への申請書は完成しており、提出、審議、承認の後、直ちに臨床試験にて生体内でのSer46のリン酸化の誘導に関して検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、治療開始後のp53 Ser46のリン酸化誘導の時期を生体内で検討する臨床試験を行う。治療開始後に内視鏡下での組織採取の時期を変えてそのリン酸化誘導を検討し、至適採取時期を決定する。その後は組織採取時期を固定し、治療前の生検組織によるp53遺伝子変異および治療開始後の生検組織によるSer46のリン酸化誘導と治療効果との関連を検討する。遺伝子変異はexon 2~11のdirect sequenceで、p53蛋白の発現やリン酸化、apoptosisの誘導はWestern boltと免疫染色にて検討し、治療効果は内視鏡判定、CT画像またはFDG-PETによる判定で検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実際の研究に関しては大学の共同研を使用するので高価な機器を購入する必要はないと考えている。しかし、sequence kitやWestern blotのkit、あるいはp53およびp53 Ser46リン酸化抗体やapoptosis関連抗体等の継続購入は必要である。また、次年度はこの研究結果を学会発表する予定で、その出張費も考慮に入れている。
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