研究概要 |
固形癌の幹細胞マーカーとして重要視されているCD44に着目し、下記のCD44発現量の異なる胃癌、大腸癌細胞株を購入し、培養を開始した。KatoIII, MKN45, MKN7, MKN74, MKN28, AGS, HCT116, HT-29。HCT116, HT-29については、細胞培養が安定し、実験に用いている。他の細胞株は培養が安定しないため、改めて細胞株を購入依頼した。 細胞表面マーカー、細胞周期解析、細胞内活性酸素量測定目的で、フローサイトメーターを用いて実験条件設定を行い、データが得られつつある。 新規購入した低酸素培養器を用いて、細胞の低酸素下培養状況を確認し、実験条件を検討した。 前年度に引き続き新規食道癌手術検体を用いてRNALater試薬でtotal RNAを抽出した。ガレクチン-7発現をReal-time PCR法で検討し、食道癌において正常食道粘膜より発現低下傾向にあることが確認された。 ガレクチン-7発現調整メカニズムを調べる目的で、食道癌臨床検体よりゲノムDNAを抽出し、エピジェネティック制御のうちプロモーターメチル化の関与を予想し、メチル化特異的PCRに用いるプライマーを設定した。実験のpositive controlには、正常皮膚組織または培養細胞としてはHeLa細胞を使用し、プロモーター設定デザイン、バイサルファイト処理に用いる試薬条件を変更等、実験条件を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
食道癌臨床検体においてガレクチン-7発現に大きい変化が認められることが明らかになったが、その遺伝子発現制御機構の検討は重要であるので、引き続きメチル化を含むエピジェネティック制御の可能性を検討する。 消化器癌の手術検体におけるCD44や種々のガレクチンの発現を調べる。ガレクチン発現と臨床情報、特に抗癌剤治療による腫瘍縮小効果の程度と予後との関連を検討する。 常酸素、低酸素培養条件で、消化器癌細胞株におけるCD44, チオレドキシン、種々のガレクチン発現と抗癌剤感受性の程度、細胞周期、細胞内レドックス、ミトコンドリア機能(膜電位)をフローサイトメーターで検討する。また、分化誘導剤、レドックス制御の可能性を有するレチノイン酸を用いて、5-FU, シスプラチンなどの抗癌剤反応性に及ぼす影響を検討する。
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