研究課題/領域番号 |
24591967
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
崎浜 秀康 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (50533676)
|
研究分担者 |
尾崎 倫孝 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (80256510)
神山 俊哉 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80322816)
|
キーワード | 循環腫瘍細胞 / 骨髄腫瘍細胞 / 微小転移 / 消化器癌 / 予後 / 治療方針 |
研究概要 |
(研究の全体構想)消化器癌(胃癌、大腸癌、肝細胞癌、膵癌)における微小転移(末梢血、骨髄)を同定し、これらを治療効果判定マーカー、予後マーカー、治療のターゲットとして臨床的に普及させたいと考えています。 (研究の具体的目的)①消化器癌患者の末梢血や骨髄血中の腫瘍細胞を同定し、病理組織学的因子、無再発生存期間、全生存期間との関係を調べる ②上記の同定された腫瘍細胞中で、実際に転移をおこす細胞に特異的なマーカーを調べる ③末梢血、骨髄血の腫瘍細胞を抽出培養し、化学治療や分子標的薬への感受性を調べる。(本研究計画の意義)CTCやDTCを同定する意義について、第一に予後因子となるということである。臨床病理学的stage分類において、同一stageの症例でも予後に大きな差が認められる。微小転移の検出により、再発や転移の有無などを正確に予測できる可能性がある。次に、手術術式の決定に対する役割である。CTCやDTCが全身への血行性転移を示すのであれば、拡大もしくは縮小手術の適応決定に大きく影響する。更に、術後化学放射線療法の効果を判定するためのpredictive markerとしての役割が考えられるCTCの推移により治療効果判定ができるのであれば、化学療法による負担の軽減や、より有効なレジメンを選択につながる可能性がある。最後に、CTCなどの質的検索により、患者の状態をリアルタイムに反映しうる”Liquid biopsy”としての役割がある。術後化学療法は、原発腫瘍の病理組織学的所見を基に選択されるが、これは術後の状態を正確に反映していない可能性がある。刻々と変化しうる患者一人一人の状態をリアルタイムに把握し、治療法を選択することが可能となり、テーラーメード治療の一翼を担うものと考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大腸癌:現在まで139症例の解析施行。1. 大腸癌患者139名のうち,29名(20.9%)にCTCを認めた。また41名中12名(29.3%)にDTCを認めた。DTC陽性症例の中でCTCも陽性だったのは4例(33.3%) であり、CTC陽性症例13名中、DTC陽性症例は9例(69.2%)であった。2. CTCと臨床病理学的因子との関係で、術前CA19-9値と深達度が、有意に CTC陽性と相関した。3. 139例中13例に再発を認め、うち7例はCTC陽性(53.8%)であった。CTC陽性は有意に転移と相関した(P<0.01)。再発に対するCTC陽性例のリスク比は4.4であった。4. 骨髄血を採取した41名中5名に再発を認め、うち4名はDTC陽性(80%)であった。DTC陽性例は再発と相関し(P-0.01)、リスク比は9.7であった。 肝細胞癌:現在まで139症例の解析施行。1. 肝細胞癌患者36名のうち,23名(65.5%)にCTCを認めた。また20名中13名(66.6%)にDTCを認めた。2. CTCと臨床病理学的因子との関係で、術前PIVKA-2値とvp因子が、有意にCTC陽性と相関した。またDTCにおいては,術前AFP値が有意に相関した。3. CTC陽性と再発との関係について、肝内再発及び 遠隔転移に有意に相関した。CTCと予後について、無再発生存率と相関するものの、全生存率とは特に認められなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
大腸癌と肝細胞癌の同定方法 そして その予後との関連においては 各々差異はあるものの predictive markerとしての有用性が 証明されつつある。 今年は CTCやDTCを抽出培養法の確立を目指し、CD-DSTシステムの導入を計りたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に 今後予定しているCD-DSTなどの予備実験を行う予定であり それを含めての使用予定額を申請していた。しかし、CTCやDTCの培養については その他の繊維芽細胞などがdishに増生され 腫瘍細胞のみの培養に難渋している。 従って その部分の予算は次年度使用額として申請したく存じます。 CTCやDTCの培養法を確立し、臨床で汎用している化学療法の感受性を調べる予定である。
|