研究課題/領域番号 |
24591971
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
米田 操 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 准教授 (60600492)
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研究分担者 |
白石 泰三 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30162762)
広川 佳史 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30322738)
石井 健一朗 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90397513)
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キーワード | 大腸癌 / 化学療法薬耐性獲得 / フェニルピペラジン誘導体 / 細胞周期阻害作用 / alpha1アドレナリン受容体 |
研究概要 |
本研究課題は、大腸癌の化学療法薬耐性獲得を克服するために、腫瘍関連マクロファージ (tumor-associated macrophages: TAMs)を主体とした癌幹細胞ニッチが新規治療標的になり得るか否かを検証することを目的としている。本年度はヒト大腸癌由来細胞株を用いて、細胞周期阻害作用を有するフェニルピペラジン誘導体の作用メカニズムを検討した。 ①ヒト大腸癌由来細胞株におけるalpha1アドレナリン受容体の発現 市販されているヒト大腸癌由来細胞株HT29, HCT116, SW480におけるalpha1アドレナリン受容体サブタイプの発現パターンを検討した。HCT116はalpha1a, alpha1b, alpha1cすべてのサブタイプを、SW480はalpha1bとalpha1cのサブタイプを発現していたが、HT29においては何れのalpha1アドレナリン受容体サブタイプも発現していなかった。 ②ヒト大腸癌由来細胞の増殖に対するフェニルピペラジン誘導体の薬理作用 フェニルピペラジン誘導体のうちナフトピジルは現在、前立腺肥大症治療薬として使用されている。ナフトピジルはHT29とHCT116の細胞増殖を有意に抑制したものの、SW480に対する増殖抑制作用は認められなかった。ナフトピジル以外のフェニルピペラジン誘導体RS100329, BMY73738, KN-62のうちBMY7378はHCT116の細胞増殖を有意に抑制した。つまり、フェニルピペラジン誘導体のなかでもナフトピジルはヒト大腸癌由来細胞の増殖を効果的に抑制できる薬剤であることが判明した。①の結果と併せて考えると、ナフトピジルによる細胞増殖抑制は本来の標的であるalpha1アドレナリン受容体を介していない、つまり他の経路が重要である可能性が強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大腸癌の薬物治療を考える上で、効率的に大腸癌の増殖を抑制することは重要であるが、主作用が強い薬剤には重篤な副作用の発現が懸念される。そこで現在、臨床で使用されていて、安全性が担保されている既存医薬品の中から大腸癌に有効な薬剤を検索したところ、前立腺肥大症治療薬の1つであるナフトピジルが大腸癌にも有用である可能性を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の検討にて、大腸癌の薬物治療に有用な既存医薬品として前立腺肥大症治療薬の1つであるナフトピジルを見出すことに成功した。ナフトピジルは副作用が極めて少なく、安全で長期に内服できる既存医薬品であり、大腸癌に対する化学予防薬として適応の範囲を拡げることが可能になるかも知れない。そこで、ナフトピジルがヒト大腸癌由来細胞に対してオフターゲット効果を発揮する癌細胞内標的タンパク質を同定し、ナフトピジルによる細胞増殖抑制効果がHT29とHCT116に特異的なものか否かを明らかにしたいと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた動物実験、すなわちin vivo腫瘍形成試験を実施できなかったために、それに係る免疫不全マウスの購入費を使用することができなかった。 当初の計画を修正し、最終年である次年度に動物実験(in vivo腫瘍形成試験)を施行し、適正に助成金を使用する予定である。
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