研究課題/領域番号 |
24591972
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
井上 靖浩 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (20324535)
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研究分担者 |
田中 光司 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (10345986)
奥川 喜永 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (30555545)
楠 正人 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50192026)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 大腸癌 / 直腸癌 / microRNA / 化学放射線療法 |
研究概要 |
我々は大腸癌の進行過程において遺伝子発現パターンを決定するのに重要なEpigenetic異常に着目し、放射線抵抗性に関与するCpG island metylationならびにそれにより不活化される遺伝子(mRNA, microRNA)を網羅的に検索し、放射線抵抗性マーカーとしての意義ならびに不活化された遺伝子の回復による放射線治療への応用を検討することを計画した。平成24年度は、まず臨床解析として、術前化学放射線療法を施行した直腸癌症例の臨床データを、症例蓄積分あわせて再検討、学会報告するとともに(第67回日本消化器外科学会)、現在まで100例となった臨床サンプル・データを整理した。さらにこれに平行する形で基礎解析を行ったが、サンプルの都合もあり、化学放射線療法検体解析の前に、コントロールとして手術単独患者におけるmicroRNAの意義についてデータを取ることとした。すなわちmicroRNA(miRNA)は血中に安定して存在することが明らかであり、バイオマーカーとして期待がもたれていることから、OncomiRNAであるmiRNA-21及び-31に着目し、大腸癌におけるバイオマーカーの意義を多面的に検討した。方法は、①大腸癌細胞株(HCT-116, HT29)のmiRNA分泌能を測定確認した。②大腸癌組織、正常大腸粘膜、大腸癌患者血清及び健常者血清の少数サンプルを使用し、組織及び血清におけるmiRNA-21、-31を測定した。③大腸癌患者血清(n=186)、 術後血清(n=60)、健常者血清(n=53)を用いmiRNAを測定した。また同一患者の大腸癌組織(n=166)も合わせて測定した。結果として、大腸腫瘍由来の血清miRNA-21は期待できる大腸癌診断マーカーであり、組織中miRNA-21、血清 CEA及びTNM分類より優れた予後マーカーであることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
直腸癌を含む大腸癌術後の予後マーカーとして、患者血清のmicroRNA-21に強い意義があることを証明できた。血清microRNA-21発現は、組織中microRNA-21、血清CEA、およびTNM分類より優れた予後マーカーであると考えられた。平成25年度はこの知見を、化学放射線療法という術前治療の修飾が入ったサンプルで、どう意義があるのか、さらに治療効果のマーカーにもなりうるのか、など、多くの興味深い検証へ連続させることが期待できる。このことから、達成度としてはおおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
放射線抵抗性に関与するCpG island metylationとtarget遺伝子(mRNA,microRNA)の網羅的解析を行う。臨床的放射線抵抗性大腸癌細胞株の作成を行い、放射線抵抗性に関与する網羅的epigenetic change(CPG islandのmethylation)および遺伝子発現の検索を行う。 平成24年度に着目し、大腸癌予後マーカーとしての意義を見出したmicroRNA-21を含め臨床検体での放射線抵抗性CpG island methylation status及び放射線抵抗性関連遺伝子と臨床病理学的検索を行う。 1)当院ですでに臨床病理学的因子ならびに予後が判明している放射線化学療法後に手術を施行した直腸癌切除症例約100例を対象に、切除標本から癌部のみmicrodissectionを施行する。2)DNAを抽出し、sodium bisulfiteで処理後、上記で候補としたCPG island methylation statusに関してmethylation specific PCRにて評価し、臨床病理学的因子(とりわけ化学放射線療法の奏効度)との相関をRetrospectiveに解析する。3)Total RNAを抽出し、reverse transcriptionにてcDNAを作製する。放射線抵抗性遺伝子発現に関してreal time PCRにて発現を定量し、臨床病理学的因子との相関を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
遺伝子発現解析(mRNA、microRNA に関するreal time-PCR)用試薬、DNA、RNA抽出試薬等、消耗品に1100千円。学会報告など旅費に50千円、人件費・謝金に50千円、その他100千円を予定している。
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