研究課題/領域番号 |
24591974
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
長谷川 傑 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10362500)
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研究分担者 |
河田 健二 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90322651)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 大腸癌 / 糖代謝 / FDG-PET検査 / KRAS遺伝子 |
研究概要 |
KRAS遺伝子変異は肺癌、大腸癌、膵臓癌など多くの癌腫で認められ癌悪性化において重要な役割をもっている。また近年分子標的治療薬である抗EGFR抗体が大腸癌治療に導入され、KRAS遺伝子変異はその治療効果を予測するバイオマーカーとしても注目されている。2009 年に大腸癌におけるKRAS遺伝子変異はグルコース・トランスポーター(GLUT1)の発現を増加し糖代謝が亢進することが細胞株を使った実験結果により報告された(Yun J, et al. Science.2009)。また同年に別グループより、低酸素条件下ではKRAS遺伝子変異はPI3K経路を介してHIF-1αの低酸素誘導を増強し、BRAF遺伝子変異はPI3K経路およびMAPK経路を介してHIF-1αとHIF-2αの低酸素誘導を誘導することが報告された(Kikuchi H, et al.Cancer Res.2009)。GLUT1はHIF-1αの下流遺伝子であることから、以上の2つの報告からは定常酸素条件下および低酸素条件下のいずれにおいてもKRAS遺伝子変異はGLUT1の発現を増強し糖代謝を亢進するという仮説がなりたつ。KRAS遺伝子変異を相同組換え法によりwild typeに戻した2種類の大腸癌細胞株(HCT116, DLD-1)を使って、KRAS遺伝子変異と糖代謝、FDG集積、低酸素誘導との関連についてその分子機序について解析する予定である。 FDG-PET検査において腫瘍部へのFDG集積に関わる最も重要な因子はGLUT1であることから、KRAS遺伝子変異と糖代謝およびFDG集積との関連についてその分子機序を解析するとともに、実地臨床のFDG-PET検査において大腸癌へのFDG集積程度を定量的に評価することでKRAS/BRAF遺伝子変異の有無を予測し大腸癌治療に応用できるか臨床検体をつかっても検討を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定どおりにおおむね実験計画は進んでおり、現在までに得られた臨床検体をつかっての解析結果は学会発表のみならず論文発表することができたから。
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今後の研究の推進方策 |
臨床検体をつかっての解析のほうはさらに症例数を増やして、FDG集積、KRAS遺伝子変異が、臨床病理学的因子、予後、再発などの臨床データとどう関係するか、さらに詳細な解析を進めていく予定である。また原発巣での評価に加えて、転移巣(肝臓、肺、リンパ節)におけるFDG集積程度の定量化も行い、KRAS遺伝子変異との関連性について検討を行なっていくことも計画している。 細胞株を使用した研究のほうは、in vitroでの分子機序の解析も順調に進み、現在はヌードマウスに大腸癌細胞を接種してのXenograftにおけるin vivo解析まで進めている。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞株を使用した研究においては、定量的RT-PCR、Western Blotting、免疫染色、各種細胞機能アッセイなどのin vitorアッセイや、マウスを使用してのin vivo実験などの解析に必要な物品、試薬、マウスの購入に使用する予定である。また臨床検体を使用した研究では、手術標本を使用しての免疫染色、定量的RT-PCR、遺伝子シークエンスなどの解析に必要な物品、試薬の購入に使用する予定である。
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