研究課題/領域番号 |
24591975
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
河田 健二 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90322651)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 大腸癌 / 転移 / 浸潤 / ケモカイン |
研究概要 |
本研究では大腸癌の悪性化・転移に関与するシグナル経路のうち、ケモカイン受容体、なかでも ①大腸癌細胞自身に発現するCXCR3及びCXCR4、②間質細胞として骨髄由来の未分化骨髄球に発現するCCR1、に焦点を当て、それらの分子機構を明らかにして臨床応用へ結びつくか検討する。 1. CXCR3とCXCR4の役割について;1)臨床検体の解析で転移巣(リンパ節、肝、肺)ではCXCR3、CXCR4いずれも原発巣に比べ発現量が有意に増加していること、2)細胞株を使用したマウス同所性移植モデルでCXCR3やCXCR4のノックダウン細胞株を樹立し検討すると、リンパ節、肝臓、肺への転移が有意に抑制され、リンパ節転移についてはCXCR3ノックダウンがより抑制効果が強いことが確認された。今後はさらに臨床検体の症例数を増やして臨床病理学的因子、予後、再発形式との関連を検討する。また上述のマウスモデルにおいて CXCR3やCXCR4の低分子阻害剤を用いた検討を予定している。 2.大腸癌肝転移における CCR1陽性骨髄球の検討; 武藤らの大腸癌モデルマウスをもちいた研究では肝転移巣周囲におけるCCR1陽性骨髄球が肝転移を促進する役割をもっていることが報告された(PNAS, 2010年)が、実際のヒト大腸癌の肝転移巣周囲におけるCCR1陽性骨髄球の存在はまだ報告されていない。我々は臨床検体をもちいた解析でCCL15を発現するヒト大腸癌肝転移巣の周囲にCCR1陽性骨髄球が集積しMMP9を発現していることを確認した。また肝転移巣をサイズ別に分類したところサイズの小さいものほどCCR1陽性骨髄球の集積が有意に多いことも確認した。今後はさらに検討症例数を増やしてCCR1陽性骨髄球の集積と臨床病理学的因子、予後、再発との関連を検討する。またマウスモデルにおいてCCR1阻害薬による肝転移抑制程度を評価する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りにおおむね実験計画は進んでおり、テーマの1つであるCXCR3とCXCR4の研究に関しては論文発表することができたから。またもう一つのテーマであるCCR1の研究に関しても、現在論文投稿中である。
|
今後の研究の推進方策 |
CXCR3は乳癌でも転移に関与している事が複数のグループにより報告されており、大腸癌以外の癌種においても転移に関与している可能性があるので、他の癌腫においても検討を進める価値があると思われる。またCXCR3やCXCR4の阻害剤をつかったマウスモデルの転移抑制効果についての検討は臨床応用を考える上では重要であると思われ、今後も検討を進める。 CCR1陽性骨髄球の研究に関しては、肝転移巣ばかりでなく原発巣でも癌浸潤に関与していることが予想され、原発巣での臨床検体をもちいた解析も重要であると思われる。また手術検体をもちいた解析に加え、実際の患者血液サンプルを使用しての解析(FACS、ELISA)も今後進める予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
細胞株を使用した研究においては、定量的RT-PCR、Western Blotting、免疫染色、各種細胞機能アッセイなどのin vitorアッセイや、マウス転移実験などのin vivo実験などの解析に必要な物品、試薬、マウスの購入に使用する予定である。また臨床検体を使用した研究では、手術標本を使用しての免疫染色、定量的RT-PCR、マイクロアレイなどの解析や、血液サンプルを使用してのFACS、ELISAなどの解析に必要な物品、試薬の購入に使用する予定である。
|