研究課題/領域番号 |
24591975
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
河田 健二 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90322651)
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キーワード | 大腸癌 / ケモカイン / 転移 |
研究概要 |
本研究はケモカイン受容体、なかでも 1)大腸癌細胞自身に発現するCXCR3及びCXCR4、2)骨髄由来の未分化骨髄球に発現するCCR1、に注目し、それらの分子機構を明らかにするとともにそれらが大腸癌転移における治療ターゲットに結びつくかを解析するものである。 1)については、ヒト大腸癌細胞株にmiRNA法を用いて①CXCR3単独ノックダウン、②CXCR4単独ノックダウン、③CXCR3/CXCR4ダブルノックダウンの3種類の細胞株を樹立してマウス転移モデルで検討したところ、CXCR3およびCXCR4いずれのノックダウンでも転移抑制効果が確認された。また実際のヒト検体を使用した解析でも、原発巣の進行度が進むにつれ、また転移巣(肝臓、リンパ節)ではCXCR3およびCXCR4とも癌細胞における発現が増加することを確認した。この結果はケモカイン受容体CXCR3およびCXCR4をバイオマーカーとして、大腸癌に対するCXCR3阻害またはCXCR4阻害が転移抑制に繋がる可能性を示唆しており、同内容は論文として発表した (Murakami et al.Int J Cancer.2013.132.276-87)。2)については、ヒト大腸癌細胞株を使用し癌抑制遺伝子であるSMAD4が欠損するとケモカインCCL15の発現が上昇する分子機序を明らかにした。さらに実際のヒト大腸癌肝転移においてもマウスのデータと同じく転移巣周囲ではCCR1 陽性骨髄球が多く集族しており、またCCL15陽性転移巣では肝転移巣を根治切除しても再発リスクが有意に高いこと、を確認した。この結果はCCR1-CCL15シグナルは大腸癌肝転移抑制にむけた新たな治療ターゲットになりうることを示唆しており、同内容は論文として発表した (Itatani et al.Gastroenterology.2013.145.1064-75)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定通りにおおむね実験計画は進んでおり、現在までに得られた実験結果は学会発表のみならず論文発表することができたから。
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今後の研究の推進方策 |
大腸癌に発現するCXCR3およびCXCR4についてはmiRNA法を用いて発現を抑制した細胞株を使用してマウス動物実験で転移が抑制することが示せた。今後はさらに臨床応用の可能性を検討するためCXCR3阻害剤、CXCR4阻害剤を使用して検討を進める予定である。骨髄球に発現するCCR1については今後はCCR1阻害剤を使用した動物実験を進めるとともに、CCR1陽性骨髄球の役割についてはヒト臨床検体を使用して大腸癌原発巣や大腸癌肺転移巣についてもこれらの実験結果が応用可能かどうか、さらに詳細な検討をしていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
若干の端数が生じたため。 新年度予算と合わせて使用の予定である。
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