平成24年度ではEPOが罹患腸管に作用し得るかを検討するためにEPO受容体発現(EPOR)の発現を免疫染色にて検討した.当科において外科的切除を行い患者の同意の下に得られたUCおよびクローン病の手術標本を用いて免疫染色を行ったところ,UCおよびクローン病の腸管組織にEPORの発現を認めEPOがヒトIBD罹患腸管に作用する可能性が示唆された. 平成25年度では薬剤誘導性マウスIBD腸炎モデルを用い,腸管障害抑制効果の検討を行った.まずは生存率を検討したところ,EPO投与群が有意に生存率を改善した.その要因の1つとして腸管局所の免疫応答を検討するためにReal-time PCRを用いたEPOによる腸管局所のサイトカイン・ケモカイン発現の測定を行った, 平成26年度は平成25年度に引き続きReal-time PCRを用いた検討を継続したところ,EPO治療群がcontrol群に比べ,IFNγ,TNFα,Eselectinにおいて発現の低下を認めた.またマウス腸管の免疫染色ではEPO治療群が炎症細胞浸潤を抑制しており腸管局所の免疫応答と腸管障害抑制効果の関連が考えられた.続いてマウス炎症モデルによる炎症発症後4日目よりEPO散治療を行い,体重の回復率を検討したところEPO治療群が有意にcontrol群と比べ回復が早かった.またその際の腸管局所のPCNAの発現をReal-time PCRにて検討したところEPO治療群が有意にPCNAの高発現を認め,EPOによる腸管局所の再生促進作用の可能性が示唆された.またヒト大腸上皮細胞株(HT29,Caco2)を用いEPOの添加がヒト上皮細胞株に対し増殖を促進し得るか検討したところ,いずれの細胞株に対しても濃度依存性に細胞増殖を認め,EPOによるヒト大腸粘膜上皮に対する細胞増殖作用の可能性が示唆された.
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