研究課題
細胞外マトリックスを基質とする蛋白分解酵素群の一種であるマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)は,がん細胞の組織内浸潤,転移に必須の因子と目されている.本研究では,生体内において膜型MMPをはじめとする相互活性化システムと血液線維素溶解系(線溶系)因子プラスミンがMMPの活性化を担っていることに着目し,主に消化器系の がん病態における各種プロテアーゼ活性化の実態と意義を明らかにすることを主目的とし,さらに線溶系因子あるいはMT1-MMP等の活性を標的としてMMPの活性カスケードを上流から抑制することによる,主に消化器がんの新規分子療法の可能性を探ることまでを目的の範疇とした.今年度までの研究で,大腸がんモデルマウスの作製のために,近交系マウスや線溶系遺伝子欠損マウスを用いて,Azoxymethane (AOM) 誘発大腸がんモデルマウスの表現型解析に取り組んできた.さらに線溶系阻害剤を投与することで,線溶系と腫瘍形成機構の関係について解析を進めた.すでに我々の過去の研究では末梢組織中で血管新生因子,ケモカインの供給源となる骨髄由来の炎症性細胞の主要組織内への動員抑制を介してリンパ腫細胞増殖が制御されていることが明らかとなっている.我々はすでに,潰瘍性大腸炎モデルマウスにより線溶系因子であるプラスミンがマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)を介し、可溶型TNFの分泌に関わることを示し、プラスミン阻害剤で腸炎が抑制可能であることを証明した。また、AOM 誘発大腸がんモデルマウスを用いて,プラスミン阻害剤が癌化を抑制し、その機序はMMPのみならず、それらプロテアーゼによって活性化をうけるEGFやTGFαを介し、腫瘍の増大を抑制していることを明らかにした。また細胞動態的にもマクロファージの浸潤を抑制することで腫瘍を支える微小環境を標的とした予防効果をも示すことができた。
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