研究課題/領域番号 |
24591985
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
逸見 仁道 東邦大学, 医学部, 准教授 (90165514)
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研究分担者 |
小池 淳一 東邦大学, 医学部, 講師 (30339155)
有田 通恒 東邦大学, 医学部, 助教 (80307719)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ゲノム不安定性 / 大腸がん / p53 / DNAミスマッチ遺伝子 / 低酸素 |
研究概要 |
ゲノム不安定性の一つであるマイクロサテライト不安定性(MSI)は高頻度のMSI-Hと低いMSI-Lおよびこれらとは 異なるスペクトラムを示すEMASTとに分類される。EMAST腫瘍は大腸がんで約6割を占め、予後不良との相関が報告されている。EMASTはDNAミスマッチ修復(MMR)遺伝子の一つであるhMSH3機能低下に起因する。本研究では(1)EMAST腫瘍発生の分子機構の解明、(2)EMAST腫瘍悪性化機構の解明、(3)臨床検体を対象に抗体染色法などの簡便検索法の開発 以上の3点を中心に大腸がんの診断や予後 判定に有用な因子の発見と検証を行うことを目的とした。 研究の初年度である平成24年度には(1)EMAST腫瘍発生の分子機構の解明を中心に解析を行った。即ち、p53遺伝子が変異した大腸がん由来細胞株を低酸素下で一定期間培養した。hMSH3タンパク発現の低下を確認後、細胞をクローニングし、種々のローカスマーカーを用いてMSIを判定した。その結果、得られた37クローンのうち、EMASTを示したのは5クローンであり、MSI-Hを示すクローンは見いだせなかった。これらの結果は試験管内でのEMAST発生条件の確立に成功したことを意味する。次に、見いだされたEMAST発生条件を利用して、発現遺伝子の変化をAgilent Technologies社のDNAチップを用いたマイクロアレイ解析で調べたところ、変化の著しい約600の遺伝子が見いだされた。これら遺伝子の属する遺伝子群や変化の意義については現在解析中である。 今後はp53遺伝子のEMAST発生への関与の検証および網羅的解析を踏まえた腫瘍悪性化に関わる遺伝子の役割解明を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
EMASTの原因遺伝子であるhMSH3の腫瘍塊における発現はまだらであり、hMSH3陽性細胞と陰性細胞が混在し、更に、陽性細胞でも発現程度が異なることから、EMAST発生モデルの確立は難しいと考えられていた。本研究により試験管内モデルの確立に成功した意義は大きい。見いだされた条件を利用して網羅的解析を行った。 解析結果を元に、本研究の次の段階に進むことが可能となった。しかし、試験管内モデルの確立には至ったが、EMAST発生が認められない条件の検証が中途段階である。また、増殖および生存に関わる遺伝子の同定には至っていない。以上の点を考量して達成度を自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
1. 増殖および生存に関わる遺伝子の同定 培養細胞増殖系の確立:EMAST発生モデルの培養条件を満たした細胞増殖測定系を確立する。確立された細胞増殖測定系を利用して、網羅的解析等で見いだされた候補遺伝子の増殖における役割を明らかにする。 2. EMAST腫瘍簡易鑑別法の確立 細胞株および病理切片を用いてEMAST腫瘍簡易鑑別法の確立を行う。まず、これまでに得られた遺伝子情報を基にmRNA発現ないしはタンパク発現を調べ、EMAST腫瘍判定に役立つかどうかを培養細胞株で検討する。即ち、正常培養細胞株や低酸素培養細胞株ならびにSLH亜株のクローンを対象に抗体染色法及びRT-PCRを行う。本検討は臨床検体を対象とした検討の前段階実験という位置づけで、期待された結果となれば当該年度以降に臨床検体を対象とした本検索を行う。様々なステージ及び肝転移した大腸原発の腫瘍のパラフィン封埋切片を対象に上記遺伝子産物を染色し、悪性度との相関を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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