研究課題/領域番号 |
24591986
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
萩原 明郎 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (90198648)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 再生医学 / 消化管再生 / 動物実験 |
研究概要 |
本研究の目的は、腸管粘膜を持ち栄養吸収を行う事が可能な、つまり腸の吸収粘膜を持ち瘢痕や線維化が無く、かつ蠕動運動をする事が出来る全周性腸管を、イヌを用いて再生することである。腸管からの栄養吸収のためには、栄養を吸収する粘膜と共に栄養を運搬する蠕動運動が必要である。しかしこの様な機能を持つ全周性の腸管の再生は、従来不可能であった。その理由は、(1)線維化(瘢痕化)を予防できなかったことと、(2)腸粘膜層の再生が困難であったこと、に要約されはる。 これまでに応募者らは、上記(1)の課題を解決し、全周性食道の再生を行ってきた。次の研究で(2)の一部を解決する血流豊富な腸管壁を持つ全周性消化管を再生した。しかしこの血流豊富な消化管の再生は、非常に短い消化管に限られていいた。 今年度の研究では、この研究を更に発展させ、長い全周性消化の再生をイヌで行ことを最終的な目的として、羊膜の代わりを務める再生の足場の作成を行った。酸性ゼラチンと酵素処理ゼラチンを様々な割合で混合し、再生の足場としての性能を、細胞増殖性で評価した。その結果、両者を半々程度の割合で混合すると、細胞増殖性が低下するが、1対9、あるいは9対1のような割合で混合すると、足場としての細胞増殖性が増すことが明らかになった。次に、熱あるいは紫外線による架橋が、細胞増殖性に与える影響について検討した。その結果、架橋度を増すと、細胞増殖性が向上することが判った。 次に犬の腸管に腹膜から筋層に及ぶ組織欠損・損傷部位を作成し、その部位に上記のゼラチンの再生足場を貼付し、組織再生と瘢痕形成や線維化の軽減・予防効果を検討した。その結果、ゼラチンの足場は、腸管組織の再生を促し、かつ瘢痕形成や線維化の軽減・予防効果を示す、優れた腸管再生の足場となることが判った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゼラチンの再生足場について、In VITROで詳細な実験を行ったので、次の段階である犬の実験に取り掛かるのは予定より遅れた。しかし、犬の実験での腸管再生に、現在のゼラチンの再生足場が、腸管組織の再生を促し、かつ瘢痕形成や線維化の軽減・予防効果を示す、優れた腸管再生の足場となることが、癒着スコアや組織学的所見から明らかにすることができた。 またイヌの消化管を用い、粘膜側を欠損させる実験モデルにより、PGAとフィブリン糊やPGAとゼラチンは、組織の再生の足場として働くことが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、再生足場シートと大網を重層させてロール状に重ね巻きし、これをチューブ状にして、腹腔内で培養する実験を行う。腹腔内で線維芽細胞や上皮細胞の培養を成功させるには、再生足場への豊富な血流供給が重要である。血管分布層から200-400μ以内の血流供給の豊富な部位では、再生足場シートに播種した平滑筋細胞が筋層を形成し、ここでのみ正常腸管粘膜が再生維持されやすいことを利用して、平滑筋細胞や脂肪由来幹細胞を播種した再生足場シートを大網で裏打し、これをロール状に重ね巻きしたチューブを作成し、重層した大網の血管分布層から隣接する再生足場シートへ血液供給する実験を行い、血流豊富な再生腸管壁内に平滑筋細胞や線維芽細胞の増殖層を再生・形成する。この方法により、血流豊富な平滑筋・線維芽細胞層を壁内に持ち、腸粘膜層を再生維持し、瘢痕化や線維化を起こさず蠕動運動し、その結果、栄養吸収能を持つ全周性腸管を再生する。 実験結果の評価は、上記腸管再生手術後1-2年に渡り、(ア) 犬を経時的に犠牲死させ再生腸管の粘膜層と筋層の再生や瘢痕化の有無を病理組織学的に確認する、(イ)放射性ポリペプチド経口投与後、吸収されたペプチドの血中濃度を測定して、消化管からのペプチド吸収能を評価する、(ウ)通常の消化管造影レントゲン検査で腸管蠕動を確認する、によって評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験動物に関する費用:イヌの購入と飼育費(えさ代と飼育施設の管理費分担を含む) 動物実験の実施に関わる費用:イヌの手術用材料費、薬剤費(麻酔剤や手術用消毒剤、イヌ用の点滴薬品や抗生物質) 再生足場に関する費用:再生足場の材料としての医療用ゼラチン購入費、足場を無菌的に作成する機材や薬剤費 細胞培養に関する費用:培養用の各種増殖因子、培養に用いる培地やプラスチック製消耗機材 病理組織学的標本の費用:酵素抗体染色用の各種抗体
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