研究課題/領域番号 |
24591986
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
萩原 明郎 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (90198648)
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キーワード | 腸管再生 / 再生の足場 / ポリグリコール酸不織布 / ゼラチン膜 / 血管系再生 / 動物実験 |
研究概要 |
2013年度の研究では、再生腸管の組織構造の支持と再生の足場の開発に、以下の様な優れた研究成果をあげることが出来た。 腸管を再生させる場合、腸管のみならずそれを栄養する血管系も併せて一体として再生させる必要がある。これらを再生する過程で、組織の構造を支持しそれに沿って腸管や血管系を再生させる足場は、非常に重要である。従来から臨床的にも用いられていたポリグリコール酸(PGA)の不織布は、繊維の集中するバンドル部(繊維間距離が10μ以下)とバンドル間の空隙(繊維間距離約800μ)に分かれ、そのためか再生組織に不織布の部位により差が存在するという欠点があった。これに対して我々は、繊維間距離がある値を中心として分布し、かつ不織布のどの部位でもその繊維間距離が変わらない不織布を開発し、更に素材をPGAから他の生体内吸収性素材に変更して、同様の不織布を作成することにも成功した。また羊膜と同様の機能を、ゼラチンを用いて作成することに成功した。これらを用いて、ラットにおける皮下組織再生の過程を、各タイプのマクロファージの浸潤増殖、線維芽細胞の筋繊維芽細胞への分化と浸潤増殖、各タイプのコラーゲンの再生沈着、周囲組織との癒着形成、などに関して病理組織学的に経時的に検討した結果、新規開発された不織布とゼラチン膜では、再生した組織が密でかつ均一であること、また組織再生に有害な炎症反応を軽度に抑え、かつ早期に組織修復が出来ること、などという長所を持つことが判った。またビーグル犬を用いて、各種の臓器・組織に関して、その再生を検討した結果、消化管や血管系のある種の組織の再生にも、従来のものより優れる事が明らかとなった。(国際特許の申請を準備中のため、詳細はここには記載しない。)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腸管の再生には、腸管のみならずそれを栄養する血管系も併せて一体として再生することが重要である。この目的には、従来のポリグリコール酸(PGA)の不織布やコラーゲンなdのタンパク質の足場は、性能が十分ではなかった。たとえば不織布では線維間距離や線維径が不適切であった。従来の腸管再生が十分な成果を挙げれなかった原因の大きな原因の一つはここにある。この問題点に対して我々は、不織布の線維径、繊維間距離等の分布を工夫し、新規の不織布の作成に成功し、また特殊に工夫したゼラチン膜の作成に成功した。これらを用いて動物での実験を行い、新規開発された不織布では、再生した組織が密でかつ均一であること、また組織再生に有害な炎症反応を軽度に抑え、かつ早期に組織修復が出来ること、消化管や血管系のある種の組織の再生にも、従来のものより優れる事が明らかとなった。以上のように、従来の材料や方法では困難であった消化管の再生が、2013年度の成果(新規不織布やゼラチン膜の開発など)を応用することによりスムーズに再生できる可能性が示された。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度の実験予定としては、上記の新規に作成した不織布を用い、主としてヒトに近い大型実験動物(ビーグル犬やミニブタ)を用いて、次のように組織の再生を行う予定である。(1)腸間膜や腸間膜内を通り大動脈・大静脈から腸管壁までを繋ぎ腸管を栄養する血管系の再生。これには新規開発の不織布、新規開発のゼラチン膜や羊膜、大網系血管を組み合わせて、腹腔内で血管系を再生する。(2)消化管壁内の組織内に分布する血管系の再生。これは、既に我々が確立した脂肪由来幹細胞をコラーゲンコート不織布上で血管細胞に分化させる技術を用い、これに新規開発の不織布を利用して微細血管を再生する。(3)消化管の平滑筋の再生は、既にある程度の方法が確立されてはいる。しかしこの従来法に新規開発のゼラチン膜や羊膜と、新規開発の不織布を併用することにより、腸管壁の再生もよりスムーズに行えるようにする。(4)最後に上記を合わせて腸管全体を再生させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年度の使用経費について: 当初の研究計画では、2013年度にビーグル犬を使用する動物実験(必要経費が大きい)を予定していたため、2013年度の使用予定金額が大きかった。2013年度の実際の実験では、ビーグル犬を使用する前の段階で、小動物を使用する実験(必要経費が小さい)により、前段階の検討を行った。その結果を受けて行う事が望ましいビーグル犬を使用する動物実験(必要経費が大きい)は、このため2013年度には実施せず、翌年(2014年度)に繰り述べて実施することとなった。この理由で、上記の経費の差が生じた。 2014年度の使用予定経費について: 上記のような理由で、当初は2013年度に実施する予定であったビーグル犬の動物実験(必要経費が大きい)を、実際には2014年度に繰り延べて実施する予定である。そのため当初は2013年度分に予定されていた経費の一部を、2014年度に繰り越す形で2014年度の実験計画に加えられる。そのため実際に使用する経費は、当初の計画で2014年度に必要な経費より繰り越しの分が増加して使用する。
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