合成レチノイドのTAC-101の作用機序解明のために、臨床使用されているATRA、Am80との比較検討を行った。TAC-101、ATRA、Am80投与によって、大腸癌細胞における核内レセプターを含めた分化誘導関連遺伝子などがどのように変化するかをマイクロアレイ法で解析した。大腸癌細胞株DLD-1の薬剤感受性試験をWST-8アッセイで行った結果で至適濃度を決定し、それらの濃度で各薬剤の72時間暴露を行いtotal RNAを抽出した。Total RNA抽出はTotal RNA/RNeasy Mini Kitを使用して行った。マイクロアレイ解析はヒト全遺伝子型DNAチップ(ヒト25k ver 2.10)を用いた2色法で、Dye-Swapを行った。RNA サンプルの品質チェックも問題なし。約25000の遺伝子を網羅的に検討し、Log2Ratio≧0.5またはLog2Ratio≦-0.5の変化を示したものを抽出した。TAC-101投与において発現が有意に増加した遺伝子は177個で、発現が有意に減少した遺伝子は77個であった。ATRA投与において発現が有意に増加した遺伝子は222個で、発現が有意に減少した遺伝子は272個であった。Am80投与において発現が有意に増加した遺伝子は143個で、発現が有意に減少した遺伝子は48個であった。これらの抽出された遺伝子において、GENECODIS2.0を使用したGO (Gene Ontology)解析とパスウエイ解析を行った。TAC-101により変化した遺伝子について、ラット大腸癌門脈内注入肝転移モデルにおける肝転移巣と正常肝組織の免疫染色を行い、TAC-101による肝転移抑制効果に関連していると思われる物質を検討した。また、ラット大腸発癌モデルにおける正常粘膜と腫瘍組織を免疫染色し、TAC-101による大腸発癌抑制効果に関連していると思われる物質を検討した。
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