研究概要 |
本年度の研究実施計画に基づき、ラットIrinotecan肝障害モデルを作成し、肝障害の発生機構について分生物学的検討を行った。Irinotecan 100mg腹腔内投与により肝障害モデルを作成し、1か月後に採取した肝組織の脂質代謝に関わる遺伝子をmicroarrayならびにRT-PCRで計測したところ、中性脂肪合成系酵素のRNA発現亢進が確認(Fasn, Acss2, Acsm5, Acsl5, Elovl6)され、さらにコレステロール合成に関わる酵素群のRNA発現も更新している(Acly, Pmvk,Mvd,Idi1, Sqle,Lss, Sc4mol,Dhcr7, CYP7A1,CYP8B1, Ugt2a3,Ugt2b)との新知見を得た。現在、肝障害機構とこれらの遺伝子発現の関係解析を継続中である。 また、同モデルを用いた有機アニオントランスポーターの発現解析も行ったところ、前述の脂質合成系発現異常とは異なり、有意差は確認されなかった。この点については仮説と異なる事から、再検討を要する。 以上の如く、中性脂肪代謝とコレステロール代謝の双方の異常が確認されつつあることから、肝障害の新たな臨床的診断法としてAcoustic Strucure Quantification(ASQ)を用いた脂肪肝定量化についての研究を開始した。大腸癌肝転移に対する化学療法前と化学療法経過中、さらに肝切除直前に評価目的に撮像したMRI、CTなどの各種画像に加えASQを測定し、切除標本の病理組織像との比較検討を行っている。中間解析では、ASQにおける局所不均一性パラメータ(F‐D ratio)は高い感度を以て脂肪化の診断に有用であり、現在症例集積中である。
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