研究課題/領域番号 |
24591999
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
安近 健太郎 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00378895)
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研究分担者 |
上本 伸二 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40252449)
石井 隆道 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (70456789)
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キーワード | 再生医学 / 間葉系幹細胞 / 多能性幹細胞 |
研究概要 |
肝障害誘導免疫不全ラット(X-SCID ラット)へのヒト幹細胞(hMSC, hiPSC)由来肝細胞移植実験 a) 肝障害誘導ラット肝における、hMSC由来肝細胞の生着・増殖能および分化形態の解析 肝細胞へ分化誘導したhMSC由来肝細胞を、免疫不全ラットであるX-SCIDラットに細胞移植した。まずはじめに、約3週齢のX-SCIDラットに対し細胞移植3日前にretrorsine腹注によって肝障害を惹起した。そして、分化誘導を終了したhMSC由来肝細胞を1個体あたり1.0×106個/PBS 1mlとなるように懸濁し、ラットの門脈に細胞移植を行った。移植後4~8週間後、細胞移植後のラット肝を摘出し、切片を作成し、human albuminに対する免疫染色を行ったところ、移植したラット肝内にhuman albumin陽性細胞を確認することができた。この結果から、移植したhMSC由来肝細胞の生着を確認することができた。これに加えて、増殖マーカーであるProliferating Cell Nuclear Antigen(PCNA)との2重免疫染色を行うことで、hMSC由来肝細胞の移植肝内での増殖能に関する解析を行った。前述のhuman albumin陽性細胞のうち一部の細胞でPCNA陽性細胞を認めた。この結果より、生着したhMSC由来肝細胞の一部は、ラット肝内で増殖していることが確認できた。また、human albumin陽性細胞のうちごく一部にCYP3A4陽性細胞を認め、ごく一部の細胞では分化・成熟化していることも確認できた。 しかし一方で、ラット血清中のヒトアルブミン値をELISA法にて測定を行ったが、検出することはできなかった。 今後は、ヒト間葉系幹細胞由来肝細胞の生存率改善効果について検討を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in vitroで分化誘導させたヒト間葉系幹細胞由来肝細胞を免疫不全ラットの肝臓に生着させることに成功したからである。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト間葉系幹細胞由来肝細胞の生存率改善効果について検討を行っていく予定である。 実際にhMSC由来肝細胞移植が肝障害に対し治療効果があるのかを検討するために、救命実験を行う。また、同時にhMSCをより肝細胞に近い細胞に分化誘導したほうが治療効果が高いのかどうかを検証することが可能となる。 まず、上記実験で用いた肝障害誘導を薬剤の投与量を変更することで、X-SCIDラットにおいて生存率40~60%程度の致死性急性肝障害モデルを確立する。このモデルラットを使用し、hMSC由来肝細胞移植群、未分化hMSC移植群およびsham operation群の3群に分けて、上記実験と同様に1個体あたり1.0×107個の細胞をPBS 1mlに懸濁し(sham operation群ではPBSのみ)、経門脈的に細胞移植を行う。これらの3群間での生存曲線を描き、hMSC由来肝細胞移植群に関して、他群と比較し生存率に有意差を認めるかを検討する。また、それぞれの群で経時的に採血を行い、ラット血液中のalanine aminotransferase(ALT), albumin, human albumin, bilirubinの濃度を比較することで、肝障害に対する改善効果を評価する。ここで、生存率に有意差が出なかった場合は、肝障害の程度や期間の変更、投与する移植細胞量の変更し、再度実験を行う。 hMSC由来肝細胞移植群で有意な生存率の改善を認めた場合は、その原因の解析を行う。はじめにそれぞれの群で生存ラットからの肝摘出を行い、これらの組織切片に免疫染色などによる解析を行い、未分化hMSC移植群やsham operation 群と比較することで、hMSC由来肝細胞の生着・増殖能や分化形態を評価する。
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