研究課題
本研究の目的は、大腸癌の浸潤能・運動能を制御する新たな分子を標的として、大腸癌肝転移の浸潤や転移を阻止する方法を確立することである。私たちがGSK-3結合蛋白として同定したh-pruneは、これまでに複数の癌種で浸潤・転移能に深く関わっていることが報告されており、h-pruneを標的分子とした大腸癌肝転移治療の可能性について検討を進めた。(1)大腸癌肝転移症例の切除検体52例における免疫染色において、h-pruneの発現を21例に認め、h-prune陽性例は有意に切除後の生存率が不良であり(p=0.0019)、h-pruneの発現は独立した予後不良因子であった。h-pruneが既知の予後因子から独立した新規バイオマーカーである可能性を示唆している。(2)大腸癌細胞株SW480にsh-RNAを遺伝子導入して、恒常的h-pruneノックダウン細胞株を作成した。この細胞株を免疫不全マウス(NRG)の門脈内注入すると、有意に肝転移形成が損なわれていることが判明した。この事実は、大腸癌肝転移モデルにおいてh-pruneが重要な役割を果たしていることを示している。(3)大腸癌細胞株HCT116にGFP/h-pruneを遺伝子導入して、恒常的h-prune高発現株を作成した。この細胞株はオキサリプラチンに抵抗性で、h-pruneがオキサリプラチン耐性に機能していることが示唆された。(4)h-prune高発現株は上皮間葉転換をきたしている可能性があり、現在解析中である。
2: おおむね順調に進展している
これまでの研究結果から、h-pruneは大腸癌肝転移切除後の独立した予後因子であることが明らかとなった。さらにh-pruneの発現がいずれも細胞運動や浸潤能、さらに肝転移マウスモデルの転移能と相関していることを明らかにした。またDNAマイクロアレイにより、h-pruneシグナル下流分子の候補が複数得られた。以上より、現在までの研究目的は概ね達成され、次年度の研究計画にスムーズに移行している。
平成26年度の研究計画は、大腸癌肝転移抑制法の開発である。すでに大腸癌肝転移マウスモデルにおけるh-pruneの重要性の評価を行っているが、このモデルを用いてPDE阻害剤Dipyridamoleの肝転移効果を検討する。またsi-RNAの投与方法として、経肝動脈的経路の可能性を探索する。
次年度の研究計画に組み込むため研究に使用する試薬の購入等
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