研究課題/領域番号 |
24592005
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
杉町 圭史 九州大学, 大学病院, 講師 (90452763)
|
研究分担者 |
調 憲 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70264025)
前原 喜彦 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80165662)
主藤 朝也 九州大学, 大学病院, 助教 (50309803)
秋吉 清百合 九州大学, 大学病院, 助教 (50567360)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 肝細胞癌 / 血管新生 / アペリン |
研究概要 |
1.肝細胞癌臨床検体におけるアぺリン・APJの発現解析 肝細胞癌(HCC)におけるアぺリン・APJの発現の有無および局在を同定するために免疫組織学的検討を行った。アペリンおよびその受容体APJ、さらに腫瘍血管の評価のためにCD34による評価を90症例にて行った。HCC切除標本においてアペリンは非癌部と比較して癌部で有意に高発現していることがわかった。CD34陽性の腫瘍新生血管の周皮細胞にアペリンの受容体であるAPJが発現していることを確認した。腫瘍新生血管の多い腫瘍ではアペリンが有意に相関して高発現していることがわかった。組織学的因子との相関を検討したところ、CD34陽性血管とAPJ陽性血管は肝細胞癌の組織学的分化度が低下するにつれて増加することがわかった。 2.リアルタイムPCR法を用いた血管新生関連因子の発現解析 HCC90症例において、アぺリン、アンギオポエチン-1、-2、VEGFの各分子をリアルタイムPCR法を用いて発現の定量的解析を行った。HCC切除標本よりRNAを抽出しcDNAライブラリーを作成した。各血管新生因子の発現量を解析した。アペリンは非癌部と比較して癌部でmRNA発現が有意に発現が亢進しており、癌における血管新生に関わっている事が分かった。各臨床病理学的因子とアペリン発現の相関を解析したところ、組織学的分化度が低分化になるにつれ発現が増加していることがわかった。またアペリン高発現群ではVEGF、アンギオポエチン-2の発現が亢進しており、各血管新生因子が相互的に機能していることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、肝細胞癌の発生・進展・再発における血管新生因子アペリンとその受容体APJの発現および機能解析を行い、分子標的治療のターゲットとなりうる可能性について検討することである。 本年度はヒト肝細胞癌臨床検体におけるアペリン、APJの定量的および局在的異常発現の同定と臨床病理学的因子との関連を明らかにすることを目的としていた。HCC切除標本の詳細な免疫組織学的解析と、遺伝子発現レベルでの血管新生因子の解析を行うことができた。よって研究計画はおおむね順調に進展していると自己点検による評価をした。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の研究結果から、HCCにおいてアペリンによる腫瘍血管新生が腫瘍学的悪性度に関与していることが予想された。次年度はさらに、アペリン、APJの機能解析を進める予定である。具体的には、既にアペリン・アンジオポエチン・VEGFを含めた血管新生因子の発現状態を確認している肝癌培養細胞株に血管内皮細胞培養株を共培養させ、腫瘍細胞と血管内皮細胞の機能解析をin vitroにて行う。また肝癌各細胞株へのアペリン遺伝子を導入し、細胞浸潤能の変化、血管新生因子の発現の変化を解析する。準備段階として我々は肝癌細胞にアペリン遺伝子が導入可能であることを既に確認している。今後はこの培養細胞系を使用して、in vitroで血管新生および腫瘍増殖におけるアペリン/APJの機能解析を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、肝細胞癌細胞培養の経費を計上した。培養に関わる消耗品費用、遺伝子導入に関わる費用、また低酸素状態で酸素を維持する費用が必要である。 また研究成果発表のための旅費を計上した。
|