研究課題/領域番号 |
24592005
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
杉町 圭史 九州大学, 大学病院, 講師 (90452763)
|
研究分担者 |
調 憲 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70264025)
前原 喜彦 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80165662)
主藤 朝也 九州大学, 大学病院, 助教 (50309803)
秋吉 清百合 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター), その他部局等, その他 (50567360)
江口 英利 九州大学, 大学病院, 講師 (90527756)
|
キーワード | 肝細胞癌 / 血管新生 / アペリン / 分子標的治療 |
研究概要 |
1.アペリン臨床検体での発現解析 HCC切除標本においてアペリンタンパクは非癌部と比較して癌部で有意に高発現しており、CD34陽性の腫瘍新生血管の周皮細胞にアペリンの受容体であるAPJが発現していることを確認した。腫瘍新生血管の多い腫瘍ではアペリンが有意に相関して高発現しており、CD34陽性血管とAPJ陽性血管は肝細胞癌の組織学的分化度が低下するにつれて増加していた。 2.アペリンと血管新生関連因子の発現解析 HCC切除症例において、アぺリンと、既知の血管新生因子であるアンギオポエチン-1、-2、VEGFの各分子をリアルタイムPCR法で発現定量解析を行った。アペリンは非癌部と比較して癌部でmRNA発現が有意に発現が亢進しており、癌における血管新生に関わっている事が分かった。アペリン高発現群ではVEGF、アンギオポエチン-2の発現が亢進しており、各血管新生因子が相互的に機能していることが示唆された。 3.肝細胞癌細胞株を用いたアペリンの機能解析 ヒト肝細胞癌(HCC)細胞株(Huh7, PLC/PRF/5)を用いてアペリンの機能解析を行った。血管新生におけるアペリンの機能解析の目的にて、低酸素状態で細胞培養を行うとアペリンの発現が有意に上昇することを確認した。 次に、HCC培養細胞にアペリンおよびアペリン阻害剤F13Aを投与した。Huh7、PLC/PRF/5、MH134(マウスHCC細胞株)にアペリンを投与したところ細胞の増殖活性に変化は見られなかった。一方、CASMC細胞(血管平滑筋細胞株)ではアペリンの投与により細胞増殖活性が上昇し、かつアペリン阻害剤(F13A)にて下がることが確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、肝細胞癌の発生・進展・再発における血管新生因子アペリンとその受容体APJの発現および機能解析を行い、分子標的治療のターゲットとなりうる可能性について検討することである。 昨年度はヒト肝細胞癌臨床検体におけるアペリン、APJの定量的および局在的異常発現の同定と臨床病理学的因子との関連を明らかにした。今年度は主にin vitroの解析において、アペリンが肝癌細胞および血管周皮細胞に及ぼす影響について解析することができた。よって研究計画はおおむね順調に進展していると自己点検による評価をした。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の研究結果から、HCCにおいてアペリンによる腫瘍血管新生が腫瘍学的悪性度に関与していることが確認された。今後はアペリン経路の阻害が新たな分子標的治療に繋がるかどうかについて解析をすすめる予定である。in vivo解析としてマウス肝癌xenograftモデルを作成し、肝癌の血管新生および腫瘍増殖におけるアペリン/APJの機能解析をおよび阻害剤による腫瘍抑制実験を行う。さらには抗VEGF薬や抗アンジオポイエチン剤との併用による相乗効果についても検討する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
少額のため次年度繰越。 来年度の物品購入使用予定。
|