研究課題/領域番号 |
24592009
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
田中 邦哉 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員教授 (10295503)
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研究分担者 |
平野 久 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 教授 (00275075)
廣島 幸彦 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (60718021)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 大腸癌 / 肝転移 / 癌幹細胞 / CD133 / CD44 |
研究実績の概要 |
大腸癌肝転移巣検体を用いて、①原発巣と転移巣で癌幹細胞マーカー発現が同一であるか、②転移巣での癌幹細胞マーカー発現は予後規定因子になり得るかを検討した。 1998年から2008年までに当科で切除術を施行した大腸癌肝転移症例103例を対象とした。このうち44例は原発巣での評価も行った。CD44、CD133の免疫組織学的発現を検討した。また浸潤能、増殖能、抗癌剤耐性能を評価するためMIB-1、E-カドヘリン、ABC-G2の発現に関しても検討した。 CD44の発現率は原発巣で41.4%、転移巣で58.7%であった。原発巣と転移巣で発現にmarginalな相関を認めた(r=0.250、p=0.071)。CD133の発現率は原発巣で53.6%、転移巣で44.6%であった。原発巣と転移巣で発現に相関は認めなかった(r=0.219、p=0.135)。肝転移巣のCD133発現は独立予後良好因子であった(Hazard ratio 0.320, p=0.0016)。肝転移CD133陰性群は陽性群に比し有意にMIB-1 indexが高く(61.6 vs 46.3%, p=0.003)、E-カドヘリン発現が低かった(29.3 vs 46.8%, p=0.001)。 原発巣と転移巣でCD133発現に相関は認めなかった。肝転移巣のCD133陰性は予後不良因子であり、増殖能や浸潤能に関連している可能性があると考えられた。 CD133の機能解析のため、CD133陽性群と陰性群における様々な蛋白の発現について検討した。APKC,HMGB1,ビメンチンなどの蛋白の発現を検討したが、特に有意な所見は認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
大腸癌肝転移の切除検体からの細胞株の樹立に難航し、その後のin vitroでの機能解析実験の進捗が遅れたため。またそれに伴い、並行して施行予定であったプロテオーム解析結果から選出した候補蛋白群の臨床検体における発現解析実験にも遅れを生じた。
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今後の研究の推進方策 |
大腸癌肝転移の切除検体からの細胞株の樹立は引き続き行っていくが、前年度はそちらを優先したために研究に遅延が生じた。今後はプロテオーム解析結果を用いた発現解析実験にPriorityを置き、研究を進めて行く予定である。我々は既にプロテオーム解析から得た候補蛋白群をネットワーク解析し、有力なシグナル経路の同定に成功した(Hypoxia関連Pathway, 未発表データ)。来年度は臨床検体を用い、大腸癌肝転移の癌幹細胞とCD133、Hypoxiaの関連について検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
大腸癌肝転移の切除検体からの細胞株の樹立に難航し、その後のin vitroでの機能解析実験の進捗が遅れたため。またそれに伴い、並行して施行予定であったプロテオーム解析結果から選出した候補蛋白群の臨床検体における発現解析実験にも遅れを生じた。そのため、購入予定であった実験試薬費用の未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き手術検体からの細胞株の樹立は行う。しかし来年度は、上記のように優先的に臨床検体を用いた大腸癌肝転移の癌幹細胞とCD133、Hypoxiaの関連についての検討を行っていく予定であるので、その実験試薬(抗体各種、PCR試薬等)に主に使用する。
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