研究課題/領域番号 |
24592011
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
河地 茂行 東京医科大学, 医学部, 准教授 (80234079)
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研究分担者 |
田中 真之 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (30573414)
渕本 康史 独立行政法人国立成育医療研究センター, その他部局等, 小児外科科長 (40219077)
田辺 稔 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (50197513)
篠田 昌宏 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (50286499)
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キーワード | 肝移植 / 腎移植 / 生体肝移植 / 液性拒絶反応 / ドナー特異的抗体 / 7th day syndrome |
研究概要 |
前年度の実施状況報告書に記載した通り、研究代表者が2012年4月より慶大外科より東京医科大学八王子医療センター(以下センターと略す)へ移動したため、研究体制の抜本的な変更が生じ、センター消化器外科・移植外科と慶應義塾大学外科の共同研究体制が必要となった。 2012年12月14日に非代償性アルコール性肝硬変の患者に対し、従姉をドナー(右葉グラフ ト)とする生体肝移植手術を行った。センターにおける生体肝移植再開第一例であった。研究期間初年度の大部分を生体肝移植再開のための様々な手続きに費やす事になったが、センターでの生体肝移植再開に併せて「肝 ・腎移植における液性拒絶反応制御を目指したドナー特異的抗体の検出と役割の解明」という慶應義塾大学病院とセンターによる多施設共同研究を東京医科大学倫理委員会に提出し2013年5月に承認を得た。慶應義塾大学では現在も審議中となっているが、ドナー特異的抗体(DSA)検出に関してはセンターでの腎移植症例、再開後の肝移植症例で実施した。 肝移植症例では移植後早期に出現するDSAが激烈なグラフト不全(いわゆる7th day syndrome)に関与しているという仮説を確かめるために本研究が立案されたため、移植後早期のDSAを測定しているが、センターでの2例目生体肝移植で7th day syndromeと思われるグラフト不全を経験した。しかしその症例ではDSAは検出されず、この時期のグラフト不全がmultifactorialであることが示唆された。 腎移植症例では移植後早期の激烈なグラフト不全を経験することがないため、移植後3ヶ月~1年でDSA検出を試み、その臨床的意義を検討している。 今後、センターと慶應義塾大学病院両輪で、移植前後のDSA測定を進めて行く予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、慶應義塾大学外科で施行する年間約10~20例の成人生体肝移植症例を対象に、術前・後に経時的にDSAを検出し、臨床経過との関連を考察する予定であったが、研究代表者が東京医科大学八王子医療センターへ2012年4月より異動となり、東京医科大学八王子医療センター消化器外科・移植外科と慶應義塾大学外科との共同研究の形で研究を立案・遂行することになった。 東京医科大学八王子医療センターでは2000年~2007年まで52例の生体肝移植を施行したが、患者遺族や一部メディ アから移植成績について問題提起がなされ、一旦肝移植プログラムを中止した経緯があり、研究初年度はセンターにおける生体肝移植再開のために奔走する1年であった。2012年12月14日に再開第一例目の生体肝移植を施行したが、慶大外科との多施設共同研究をこの時点で立ち上げたため研究遂行が遅れる結果となった。センターでの生体肝移植症例はまだ少なく、腎移植症例も含めてDSAの意義を検討中であり、最終年度はセンターと慶應義塾大学病院の両者で積極的にDSAの測定を行い、臨床的意義を検証する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
東京医科大学八王子医療センター消化器外科・移植外科(本年度より研究代表者が科長となった。)と慶應義塾大学病院外科との共同研究の形で研究を進めて行く。 肝移植に関しては、移植後約1週間で激烈なグラフト不全を発症する病態(7th day syndrome)の病態解明を意識して、術前、移植後5日目、移植後2週間、退院時のポイントで抗HLA抗体のスクリーニングであるPRA法を施行し、PRA陽性症例に関してはHLA class i, IIのsingle antigenの測定を行い、DSAの経時的変化を検討する。測定はSRLを通じてReproCELLのシステムを用いて行う。 腎移植に関しては、移植後早期に肝移植のような激烈なグラフト不全を呈する病態は極めて珍しいため、むしろ長期的な予後にDSAがどのように関与するかを中心に検討する。従って、移植前、移植後3ヶ月、移植後6ヶ月、移植後1年のタイムポイントで、ルーチンに施行しているプロトコール腎生検とともにPRAを施行し、陽性であればsingle antigenの測定を施行する。 また肝・腎移植両者でCDCクロスマッチ陽性症例に関しては、フローサイトメトリーによるクロスマッチを追加して施行しクロスマッチ間の測定結果の違いを検討する。さらに、得られた結果と臨床経過を比較検討し、DSAとリンパ球クロスマッチとの関連、移植後の拒絶反応や7th day syndromeのようなグラフトロスに関わる病態、Chronic allograft nephropathy (CAN)等との関連について考察する。 得られた結論に関しては、国内・国外の学会を通じて発表し、論文作成を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
肝移植に於けるDSAの経時的変化を測定することを第一の目的として立案した研究であったが、昨年度の生体肝移植実績が2例のみであり、DSA測定に係る金額が交付金額に比して少なかったため。 研究計画を腎移植にも拡大し、腎移植術前、術後3ヶ月、6ヶ月、1年の時点でもプロトコール腎生検とともにDSAの測定を施行することとしている。当施設では年間10-20例の腎移植を行っており、DSA測定に相応の使用額が必要となる。 生体肝移植に関しても、共同研究施設である慶應義塾大学病院での測定も本年度は積極的に行っていく予定なので、次年度使用額も含めて、助成金の使用が必要である。
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