研究概要 |
1)ヒト肝細胞がん由来培養細胞におけるT-01の感染効率の検討。 ウイルスの感染効率:各種細胞(HepG2,HuH-7; 5.0x105cells/2ml/well)にT-01希釈液(MOI 0.01)を添加し、1時間培養した(初期感染)。T-01を除去し、さらに37℃で48時間培養した。回収した細胞および上清を用いて、Vero細胞でウイルスのタイターを測定した。結果は、「Veroでの感染効率(160倍)と比較して、HepG2で80倍、Huh-7で55倍の複製能を示した。 2)ヌードマウスを用いたヒト肝がん皮下モデルの作成とT-01の抗腫瘍効果の検討は、ヌードマウスにHepG2あるいはHuh-7(1×107 cells)を皮下に注入した。腫瘍を目視確認した後、T-01(2×106pfu/10% glycerol/DPBS/回)を腫瘍内投与した。投与後28日間の腫瘍の体積変化と生存率を検討すると回数依存性にT-01投与による抗腫瘍(腫瘍の縮小)効果が得られた。 3)ヌードマウスの肝左葉にHuh-7(5×106 cells)を移植し、21日目に開腹し腫瘍を目視確認した後、T-01(2×106pfu/回)を腫瘍内投与した。その21日目にsacrificeし、腫瘍体積を検討するとT-01投与群において抗腫瘍効果を認めた。 4)マウス正常肝でのT-01の安全性の検討は、ヌードマウスをT-01投与(2×106pfu)群およびmock群)に分けた。開腹後、肝左葉にT-01あるいはmockを投与し閉腹し、3,7日後に採血(肝,腎機能)と病理(肝左葉、腎、肺)を検討した。結果として3,7日目の肝機能、腎機能ともに両群に有意差は無く、肝臓の病理では穿刺部位には物理的な壊死像を認めたが、炎症所見や肝細胞の脂肪変性は無認めなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1)肝細胞癌培養株で現在入手可能な13種(HLE,HLF,JHH-1,JHH-2,JHH-4,JHH-5,JHH-6,JHH-7,HuH-1,HuH28,KYN2,Li-7,PLC/PRF/5)に対するT-01の細胞障害性と複製能を検討する。それぞれの背景(HBVやHCV由来など)と細胞障害性との関係などを比較検討する。 2)肝がん細胞株マウス同所(肝内)移植モデルを用いて、T-01(ルシフェラーゼ発現コンストラクト、Luc発現)の局所投与後の挙動と抗腫瘍効果との関連を経時的に詳細に追求する。 3)Luc発現肝がん株マウス肝内移植モデルを用いて、T-01の経時的な抗腫瘍効果と、治療後の生存率の検討。両側ソケイ部皮下移植腫瘍モデル(多発モデル)や腹膜播種モデルでのT-01の非接種部位に対する特異的抗腫瘍免疫効果の検討する。 4)併用療法(ソラフェニブやシスプラチン)による相加相乗効果の検討とHSV-1感受性の高いAJマウスを用いて、野生型HSV-1とT-01との比較検討する。
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