研究課題/領域番号 |
24592015
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
平野 公通 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (90340968)
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研究分担者 |
飯室 勇二 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (30252018)
裴 正寛 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (30423883)
大橋 浩一郎 兵庫医科大学, 医学部, 病院助手 (50573987)
藤元 治朗 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (90199373)
末岡 英明 兵庫医科大学, 医学部, 病院助手 (20419831)
中村 育夫 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (10625312)
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キーワード | CXCケモカイン / HCC / ICC |
研究概要 |
原発性肝癌(肝細胞癌HCC,胆管細胞がんICC)において脈管侵襲(門脈vp、静脈vv)は重要な予後因子であり、HCCでは門脈3次分枝、静脈抹消枝に侵襲を認めるvp1, vv1においてすでに予後は有意に不良であり、vp3-4, vv3に至ると切除制限、不能症例が増し、さらに予後不良なことに加えて高率な肝内外転移を認め、時に腫瘍栓による突然死を認める。ICCはHCCよりさらに予後不良な疾患であるが、vpはp=0.008, Hazard ratio 3.704と強力な独立予後因子である。肝癌の微小環境破綻によるaggressiveな進展に炎症性サイトカインのサブファミリーであるケモカインが関与しているのではないかとの仮説を立て、検討を行いヒトHCC切除サンプルにおいてN末端にELR-motifをもつELR-positive CXC chemokine (CXCL)のレセプターであるCXCR2の発現を癌部・腫瘍栓部・非癌部で検討した免疫染色等を用いた形態学的検討の結果、脈管侵襲陽性症例と陰性症例では癌部におけるレセプター発現に差異は認めなかったが、腫瘍栓部では著明に発現の増加が認められ、脈管侵襲におけるサイトカインの関与が示唆された。さらにヒト肝癌細胞株でケモカイン発現をELISAで測定したところ、CXCL5の高発現、CXCL1,8の発現を確認した。ICCにおいては先にin vitroにおける検討でCXCR2制御による増殖、遊走および進展の制御を確認していたので、リガンドをICC細胞株でELISAにて測定、CXCL8が最も発現していたため、これのknock downを行ったが予想に反し増殖、遊走および進展の抑制を認めなかった。これらのことより肝癌の進展へのケモカインの関与が示唆され、その制御にはレセプターであるCXCR2が重要である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
原発性肝癌の進展におけるケモカインおよびそのレセプター関与に関する報告は希少である。今回同一腫瘍内のレセプター発現の差異を確認しえたことにより肝癌の脈管内進展、悪性化におけるケモカインの関与が示唆された。またCXCケモカインはそのレセプターであるCXCR2と一対一対応でなく多対一対応であるがゆえか、ライガンドの制御では進展抑制が見られず、レセプターの制御が有効であることが明らかになり、今後の臨床での新規治療開発の方向性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
ICCに関してはレセプターおよびリガンド制御による効果を確認しえたので、ついでヒト肝癌細胞株を用いてligandの添加・阻害およびreceptorの阻害を行い評価する。また非癌部間質との関与を明らかとするため腫瘍栓部、腫瘍被膜破綻部における発現差異を形態学的に検討すると共に、frozen stockしているサンプルよりRNA、タンパク質を抽出し、分子レベルでの発現差異を明らかとする。ついで線維芽細胞と共培養を行い進展の増強がおこるかを確認し、その制御が可能か評価すると共に細胞の遊走・浸潤の形態評価に加えて遊走のメカニズムであるPI3K/Akt signal経由のRho family活性化、それに続くアクチン重合までを評価行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
金額が少額で使用できなかったため。 次年度に行う免疫染色の抗体購入に使用します。
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