研究分担者 |
飯室 勇二 山梨大学, 総合研究部, 医学研究員 (30252018)
裴 正寛 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (30423883)
大橋 浩一郎 兵庫医科大学, 医学部, 病院助手 (50573987)
藤元 治朗 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (90199373)
末岡 英明 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (20419831)
中村 育夫 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (10625312)
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研究実績の概要 |
以前に我々は胆管細胞がん(ICC)の悪性化に炎症性サイトカインのサブファミリーであるケモカインが関与しているとの仮説を立て、そのレセプターであるCXCR2を制御することによりin vitroおよびin vivoにおいて増殖・遊走・浸潤を抑制し得たことを報告した。この結果をふまえ、原発性肝癌の脈管侵襲とケモカインの関連を検証した。原発性肝癌(肝細胞癌HCC,胆管細胞がんICC)において脈管侵襲(門脈vp、静脈vv)は重要な予後因子であり、HCCでは門脈3次分枝、静脈抹消枝に侵襲を認めるvp1, vv1においてすでに予後は有意に不良である。ICCはHCCよりさらに予後不良な疾患であるが、vpは強力な独立予後因子である。肝癌の微小環境破綻によるaggressiveな進展に炎症性サイトカインのサブファミリーであるケモカインが関与しているのではないかとの仮説を立て、検討を行なった。HCC切除サンプルにおいてCXCR2の発現を癌部・腫瘍栓部・非癌部で検討した免疫染色等を用いた形態学的検討の結果、腫瘍栓部では著明に発現の増加が認められ、脈管侵襲におけるサイトカインの関与が示唆された。さらにヒト肝癌細胞株でケモカイン発現をELISAで測定したところ、CXCL5の高発現、CXCL1,8の発現を確認した。さらに分子レベルでのCXCL8、CXCR2発現を検討すべくHCC癌部、非癌部のヒトサンプルを用いてReal time PCRを行ったが、癌部での有意な高発現を認めなかった。局所でのケモカインによるパラクラインシグナルネットワークで重要な役割を担うmyeloid derived suppressor cells (MDSC)を免疫染色したところ、vp症例において強い集積を認めた。以上より原発性肝癌における脈管侵襲にケモカインネットワークが関与している可能性が示唆された。
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