研究課題/領域番号 |
24592018
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
元井 冬彦 東北大学, 大学病院, 講師 (30343057)
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研究分担者 |
大塚 英郎 東北大学, 大学病院, 助教 (50451563)
立川 正憲 東北大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (00401810)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 膵臓外科学 |
研究概要 |
1:S1耐性因子スクリーニング:膵癌の標準抗癌薬 S-1(5FU)の感受性を評価するために、細胞株を用いて発育阻止実験を行ない、50%発育阻害濃度(IC50)を測定した。IC50値は、0.1~18.0μg/mlまで分布を示し、薬剤感受性は通常培養条件下で、細胞種により大きく(100倍以上)の差があることを見出した。感受性に差がある細胞株の蛋白発現プロファイルを求めることで、自然耐性メカニズムを説明することが可能になると考えられる。5FUの代謝経路に存在するThymidylate synthetase (TS)等の酵素、分解に関与するDihydropyrimidine dehydrogenase、及び活性体であるF-dUMPを、 高速液体クロマトグラフィー接続タンデム質量分析装置(LC-MS/MS)を用い、上述の細胞株で定量するために、特異的probeを作製し定量系を整備しており、一部では既に測定が可能となった。IC50値と相関する因子をS1耐性候補因子として抽出する予定である。 2:臨床組織サンプルによる測定:肉眼的治癒切除が行なわれた浸潤性膵管癌(組織学的診断)症例から腫瘍組織の一部を用いて、LC-MS/MSを用いて薬物代謝酵素群を定量し、術後補助療法としてのゲムシタビンの効果との相関を前向きに検討する臨床試験を当施設の倫理委員会に申請・承認を得た(UMIN-000006253)。既に40例を前向きに集積した。今後経過観察を行ないながら、再発を術後補助療法の効果アウトカムとして、アウトカムに関連する因子を決定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
In vitro培養系、及び臨床サンプルの集積は計画通りに進行している。LC-MS/MS測定において、一部の測定系にエラーがでるため、測定に遅れが出ている部分がある。測定の遅れが生じたため、耐性因子の抽出には至っていないが、現在測定系を見直し、耐性因子の抽出が完了する見込みである。臨床サンプル集積は、予想よりやや早いタイミングで終了した。今後は測定とともに、臨床アウトカムの評価が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
これまで膵癌切除後補助療法の第一選択薬はGEMであったが、平成24年度末に公表された大規模臨床試験(JASPAC-01)では、S1のGEMに対する優越性(2年生存率を40%改善)が明らかにされた。従って、S1耐性因子の抽出は非常に重要であり、本研究の意義は飛躍的に増したと言える。S1耐性因子が抽出されれば、上述の臨床試験で明らかにされた優越性の恩恵を得る症例を選別できる可能性がある。また、計画に従い、GEM/S1同時もしくは逐次曝露による両薬剤に耐性の細胞株を樹立し、発現プロファイルを比較することで、多剤耐性・交差耐性のメカニズムを明らかにできると考えられるため、精力的に取り組んで行く。臨床情報に関しては、前向き集積例の経過を追跡しつつアウトカム(再発・死亡)を確認し、半数以上のアウトカムが明らかになった時点で、蛋白発現プロファイルとの相関を検討する予定である。また、GEM/S1両薬剤の感受性・耐性のアウトカムとして、化学療法施行後に切除された症例の臨床病理学的データは重要であると考えられたため、当施設で施行されたGEM/S1術前化学療法施行例の臨床成績及び病理学的所見を合わせ追求する予定である。また、抗癌剤耐性と腫瘍浸潤・転移は密接な関連があると考えられるため、膵癌の浸潤転移のメカニズムとの関連も合わせ検討して行く予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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