研究概要 |
膵癌細胞抗癌剤耐性の検討:膵癌の増殖・進展に関与する可能性がある標的経路を同定とするため、標準抗癌薬(5FU)とともに、各種分子標的薬に対する膵癌細胞株の発育阻止実験を行った。昨年度より、細胞株の種類を増やし、11種の膵癌細胞パネルを用いて、50%発育阻害濃度(IC50)を測定した。 Gefinitib(EGFR阻害薬)のIC50値は、1.42~23μg/mlまで分布、Lapatinib(Tyrosine kinase阻害薬)のIC50値は、3.3~9.49μg/mlまで分布、Imatinib(PDGFR阻害薬, Tyrosine kinase阻害薬)のIC50値は、2.37~32.4μg/mlまで分布、Sunitinib(VEGFR阻害薬, Tyrosine kinase阻害薬)のIC50値は、1.65~8.95μg/mlまで分布、Sorafenib(PDGFR阻害薬, VEGFR阻害薬, Tyrosine kinase阻害薬)のIC50値は、2.57~9.81μg/mlまで分布、Tivantinib(c-Met阻害薬)のIC50値は、0.24~0.75μg/mlまで分布、5FU(DNA合成阻害, 標準薬)のIC50値は、0.79~4.95μg/mlまで分布していた。分子標的薬のIC50値は、5FUに比べ概ね高値(低感受性)を示すものが多く、膵癌細胞において単一のあるいは少数のシグナル伝達阻害が、増殖阻止に充分な効果を示さないことが明らかになった。観察された事実は、これまで複数の臨床研究で、分子標的薬が有効な臨床効果を得られなかった事実に良く合致するものである。その中で唯一、Tivantinibは11種の膵がん細胞全てに対し、比較的低いIC50値を示したことから、抗腫瘍効果が期待できることも推察されている。
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