研究実績の概要 |
dCKは塩酸ゲムシタビンをリン酸化体に変換し、抗がん作用を誘導する。dCKの発現量が多い程、ゲムシタビンの活性体が多くなるため、抗がん作用が増強されると考えられる。術後補助化学療法の設定では、無再発生存期間が延長する(再発率が低下する)ことが予想される。 膵癌切除後に術後補助化学療法として塩酸ゲムシタビンが投与された10名の患者の無再発生存期間と、切除検体の腫瘍サンプルを、高速液体クロマトグラフィー接続タンデム質量分析装置(LC-MS/MS)を用いて定量した、ゲムシタビン代謝関連酵素(ENT-1, dCK, UMP-CMP kinase, CDA, DCTD, cN-II, cN-III, CTPS1, CTPS2)の発現量を比較検討した(後ろ向き解析)。10種の代謝関連酵素で唯一、dCKの発現量と無再発生存期間は有意な相関を示し(p=0.0026)、dCKの発現が高い程、無再発生存期間が延長していた。一方その他の酵素発現量量はいずれも無再発生存期間と相関していなかった。塩酸ゲムシタビン代謝酵素の発現量であるdCKとゲムシタビンの有効性アウトカム(術後補助療法の無再発生存期間)の関連が確認された、はじめての結果であり意義が高いと考えられる。 上記結果を前向き観察研究で確認するために、臨床サンプルによるゲムシタビン薬物代謝酵素群の定量(前向き観察研究, UMIN-000006253)を開始した。45例の症例登録が行われ、最終病理診断で慢性膵炎であった1例を除く44例から得た腫瘍組織の一部をLC-MS/MSにより現在定量中である。
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