研究課題/領域番号 |
24592024
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小林 省吾 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30452436)
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研究分担者 |
和田 浩志 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00572554)
永野 浩昭 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10294050)
丸橋 繁 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター(研究所), その他部局等, その他 (20362725)
川本 弘一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30432470)
江口 英利 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90542118)
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キーワード | 胆道癌 / 炎症性サイトカイン / 化学療法抵抗性 / 癌間質 |
研究概要 |
炎症とともに進展する癌病巣として特徴的なのが胆道癌である。胆道狭窄を伴う場合、胆道ドレナージを例外なく必要とし、しばしば感染を伴い、胆管炎を治療しながら癌診療を継続することになる。本研究においては、胆道癌の臨床的特徴を解析するとともに、炎症に伴う癌細胞および周囲環境の形質変化を検討することとした。研究者らは、胆道癌に作用する代表的な炎症性サイトカインであるIL-6とTGF-βに着目し、この2分子の相互作用としてIL-6/TGF-βクロストークを証明するとともに、化学療法抵抗性と上皮間葉転換に着目し、研究を進めた。当該年度に実施した研究の具体的内容としては、胆道癌における進展形式と化学療法に関する研究を通じて、胆道癌細胞株におけるIL-6/TGF-βクロストークや上皮間葉転換が、癌先進部や転移巣で再現されていることを明らかにした。さらに、胆道癌は化学療法を施行するにあたり肝内胆管癌も対象としているが、その肝内胆管癌細胞においてはIL-6/TGF-βクロストークや上皮間葉系転換が著しいことが分かった。次に、この現象を制御する細胞内シグナル伝達経路について検討した。複数の細胞内シグナル伝達経路に特異的な阻害剤またはsiRNAを用いて、主要経路の候補について検討したところ、その経路の阻害により、IL-6およびTGF-βの両方の発現の低下が認められた。また、癌細胞外因子への影響について検討した。癌細胞外因子として腫瘍内間質における分子について検討したところ、リンパ節転移や化学療法抵抗性との関与が明らかになった。ただし、炎症への関連性は現在検討中である。 本研究の意義は、胆道炎症が癌細胞に与える影響の一つとして、化学療法抵抗性を考慮すべきであることを明らかにしたことである。本研究結果は、胆道癌における治療の方向性を決定する上で、重要性を持つと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、本研究の主要仮説であるIL-6/TGF-βクロストークを証明し、化学療法抵抗性と上皮間葉系転換との関連性を示し、胆道癌における臨床的特徴と化学療法の治療成績との関連性や、複数の胆道癌癌種(肝内胆管癌、肝門部胆管癌、遠位胆管癌、胆嚢癌、乳頭部癌)における特徴、転移巣や先進部における特徴などを明らかにした。また、複数の化学療法抵抗性をもつ胆道癌細胞株を作成し、その特徴についても検討を進めている。さらに、細胞外因子との関連性について、切除標本を用いた免疫組織化学染色による検討を開始した。メカニズムについては主要な細胞内シグナル伝達経路について検討を開始している。本年度においては、本研究の主要仮説をさらに深く突き詰めたものの、細かいメカニズム等や、他の因子の関与等については明らかになっておらず、次年度以降の解析によって達成可能と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度においては、研究の主要仮説であるIL-6/TGF-βクロストークを明らかにし、化学療法抵抗性と上皮間葉系転換に影響することを細胞実験に加えて、臨床検体を用いて証明した。また、癌種における炎症性サイトカインの作用の差異や、メカニズム解析、癌細胞外因子に関する検討など開始した。今後の推進方策としては、さらなるメカニズム解析と、それに基づく治療への応用の可能性の検討を中心に研究を遂行する。主なメカニズム解析としては、細胞内シグナル伝達経路がどのように関与しているかを解明するほか、他の癌の形質であるアポトーシス、転移浸潤能、癌幹細胞化への影響を検討する。さらに、樹立しつつある、化学療法抵抗性を保有した複数の胆道癌細胞株を用いて、前述の形質を検討するとともに、ヒストン/転写因子/non-cordingRNA系に関する検討を開始する。癌細胞外因子については、本年度においてPreliminaryな検討を行い、化学療法抵抗性の関与を明らかにしたことから、今後は炎症性サイトカインの関与や癌進展への影響についての検討を進める。 胆道炎症は現時点では治療経過中不可避の現象であるため、本研究の最終目的は、メカニズムを明らかにすることによる治療への応用の可能性を検討することである。上記メカニズムの解明が終了次第、治療への応用の可能性の検討を開始する。
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