研究課題
本邦を含めた東アジアに多く発生し、国際的にも症例数が増加している胆道癌に関しては、確立した治療法としては外科切除以外には乏しいため、その癌進展メカニズムを解析し、癌先進部の制御と外科切除を組み合わせた治療法の開発を行い、本邦から情報発信することが必要であると考えている。胆道癌は臨床治療経過中に胆道ドレナージを例外なく必要とし、感染およびその治療をしながら癌診療を継続することになるため、炎症とともに進展する特徴に着目した。胆道癌に作用する代表的な炎症性サイトカインとしてIL-6とTGF-βを特定し、この2分子間の相互作用としてのIL-6/TGF-βクロストークを証明した。これらの炎症性サイトカインは化学療法抵抗性や上皮間葉転換に影響し、胆道癌細胞株だけでなく臨床検体においても、癌先進部で再現されていた。このメカニズムは、細胞内シグナル伝達経路の特異的な阻害剤またはsiRNAを用いて検討し、Smad4の阻害によりクロストークが制御可能であった。さらに上皮間葉転換が可逆的変化であることに着目して、Epigeneticな制御を行うヒストンに着目したところ、クロストークが誘導する上皮間葉転換や化学療法抵抗性が制御可能であること、Smad4がやはりKey factorであることを明らかにした。一方で、誘導した化学療法抵抗癌細胞株は複数の薬剤に対する化学療法抵抗性も有しており、これは細胞の有するもともとのDNA repair systemや幹細胞が関与していた。一方で、放射線は化学療法抵抗性に関与していなかった。以上から、炎症を伴うことによる癌先進部における上皮間葉転換、化学療法抵抗性の誘導を明らかにし、そのメカニズムの解析を通じて、ヒストン制御や放射線治療を追加することでその抵抗性を打破できる可能性を示したことは胆道癌治療における新たな可能性を示したということで非常に意義のあることと考える。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (10件)
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