研究課題/領域番号 |
24592028
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
村上 義昭 広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 准教授 (10263683)
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研究分担者 |
上村 健一郎 広島大学, 大学病院, 助教 (60379873)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 胆道外科学 / 胆管癌 / 化学療法 / 個別化治療 |
研究概要 |
【目的】TS(Thymidylate Synthase), DPD(Dihydropyrimidine Dehydrogenase), OPRT(Orotate Phosphoribosyltransferase)はフッ化ピリミジン系抗癌剤の代謝関連酵素であり、胆管癌における各酵素の発現からS-1を用いた術後補助化学療法の抗腫瘍効果が予測可能かどうかを検討した。 【対象】1989年から当科において手術を施行したUICC StageII以上の肝内および肝外進行胆管癌症例でS-1を用いた術後補助化学療法施行群(S-1(+)群)41例と非施行群(S-1(-)群)50例を対象とした。 【方法】術後パラフィン切片にそれぞれTS, DPD, OPRTポリクローナル抗体を用い免疫組織染色を行い、癌組織での各種発現をGrade0~3の4段階に分け、Grade2,3の癌細胞が30%以上を高発現とし、それ未満を低発現とした。各種発現と臨床病理学的因子との関係を検討し、生存率を比較検討した。 【結果】TS, DPD, OPRT高発現群はそれぞれ48例(52.7%)、49例(53.8%)、62例(68.1%)であり、それぞれ高発現群と低発現群の間に臨床病理学的因子の差は認めなかった。生存率に関しては、DPD, OPRTではそれぞれ発現による差を認めなかった。TSではS-1(-)群では生存率に差を認めなかった(P=0.894)が、S-1(+)群ではTS低発現群の方がTS高発現群に比べ有意に予後が良好であった(P=0.015)。 【結論】TS低発現の胆管癌に対するS-1を用いた術後補助化学療法の効果は期待しうると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、GEM+S-1併用術後補助化学療法施行例を含む約100例もの進行胆管癌手術症例の切除標本を用いて、①GEM及び5-FU代謝関連酵素であるhENT1、TS、DPD、OPRT、TP、UP、RRM1、RRM2等の発現を免疫組織化学染色法により解析し、②RT-PCR法を用いて、これらの酵素のmRNA量を測定し、免疫組織化学染色法による酵素発現との相関及 び化学療法感受性との関連を検討し、以上の結果が臨床病理学的因子や予後と関連があるか否かを検討し、さらに③胆道癌培養細胞の5FU感受性試験、GEM感受性試験を行い、各mRNAの発現傾向との関連を明らかにすることを目的としている。今回の研究結果でTS、DPD、OPRTの酵素発現と臨床病理学的因子や予後との関連が明らかになったことは、今後の研究の推進および発展に意義があると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、hENT1、TS、DPD、OPRT、TP、UP、RRM1、RRM2等のGEM及び5-FU代謝関連酵素について、RT-PCR法を用いてmRNA量を測定し、免疫組織化学染色法による酵素発現との相関及び化学療法感受性との関連を検討し、臨床病理学的因子や予後と関連を明らかにする。さらに胆管癌化学療法の個別化治療としての臨床応用へ向けて、胆道癌培養細胞の5FU感受性試験、GEM感受性試験を行い、各mRNAの発現傾向との関連を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
①total RNA 抽出(担当:上村)ホルマリン固定パラフィン包埋標本を10µm厚に薄切し、キシレン、エタノールで脱パラフィン後、nuclear fast redにて染色、エタノール、キシレンで脱水させる。癌組織をマイクロダイセクション法(Application Solution Laser Mycrodissection System; Leica)で選択的に摘出し、RNeasy Micro Kit(Qiagen)を用いてtotal RNAを抽出する。 ②real time RT-PCR(担当:上村)各primerを用い、各代謝関連酵素(TS, DPD, OPRT, TP, UP, hENT1, RRM1, RRM2)のreal-time RT-PCRを行う。それぞれのmRNAの発現をβ-actinを内部標識として定量化する。 ③免疫組織化学染色(担当:村上)ホルマリン固定パラフィン包埋標本を3μm厚に薄切し、キシレン、エタノールで脱パラフィン後、オートクレーブにて抗原の賦活化を行う。次にH2O2加メタノールにて内因性ペルオキシダーゼを除去し、各代謝関連酵素(TP, UP, RRM1, RRM2)の抗体を添加し反応させる。DABにて発色させ、染色の程度により分類をする。 ④統計分析(担当:村上、上村)上記の結果と臨床病理学的因子、生存率などとの関連につき検討する。
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