本研究では、ヒト胆道癌に対する術後補助化学療法に対する抗癌剤代謝関連酵素の発現解析を行い、感受性予測因子になりうる抗癌剤代謝関連酵素の探索と予後予測因子としての意義、最終的には、術後の抗癌剤選択の個別化の可能性について探索するものである。 当研究室では、ヒト胆管癌に対する抗癌剤代謝関連酵素(hENT1、RRM1、TS、DPD、OPRT)の感受性・予後予測因子としての有用性を免疫組織学的手法を用い検討してきた。手術施行した進行胆管癌100症例に対して、GEM及び5-FU代謝関連酵素であるhENT1、TS、DPD、OPRT発現を免疫染色法により解析し、hENT1高発現、RRM1低発現、及びTS低発現症例は、Gemcitabine + S1化学療法に対する高感受性グループで、生存期間の延長を認めた。平成26年度研究計画では、RT-PCR法でを用いた発現解析を追加施行、免疫組織学的手法との差異、臨床的な意味合いを検討した。免疫組織学的な発現様式と、microdissection法を使用した組織における同代謝酵素のRP-PCRによるRNA発現解析は、良好な相関祖をした。しかし、パラフィン標本を用いたRT-PCRによるmRNA発現解析は、約10%の症例でmRNAの採取がうまくいかない場合があり、PCRによる測定系の限界と考えられる。本研究結果から、免疫組織学的手法に加え、RT-PCR法でのmRNA発現解析は、抗癌剤感受性の指標として臨床応用への可能性があると考える。
|