研究課題/領域番号 |
24592029
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
大島 稔 香川大学, 医学部附属病院, 助教 (60624830)
|
研究分担者 |
谷内田 真一 独立行政法人国立がん研究センター, その他部局等, その他 (20359920)
岡野 圭一 香川大学, 医学部附属病院, 准教授 (20314916)
鈴木 康之 香川大学, 医学部, 教授 (40304092)
|
キーワード | 膵臓癌 |
研究概要 |
[背景] 膵臓癌の予後は依然として不良であるが,膵臓癌の全遺伝子解析(20,661遺伝子)の結果,高頻度に認められる遺伝子変異は4つの遺伝子(KRAS,CDKN2A/p16,TP53,SMAD4/DPC4)のみであることが報告されている.我々は,ほぼ100%の頻度で変異がみられるKRASを除く主要3遺伝子(CDKN2A/p16,TP53,SMAD4/DPC4)の変異と分子生物学的特徴や予後との関係を評価した. [方法] 2000年以降に手術を施行された106例の通常型膵管癌を対象とした.主要3遺伝子(CDKN2A/p16,TP53,SMAD4/DPC4)の変異を免疫組織化学染色で評価し,臨床・病理学的な因子や再発パターン(局所再発 vs 遠隔転移),生命予後との関連性を検討した. [結果]p16,p53,Smad4は免疫染色でそれぞれ70%,81%,60%に異常を認めた.p16の欠損はリンパ管侵襲や腫瘍の広範囲の進展に有意に相関し,p53の異常は腫瘍分化度や術後の局所再発の有無と有意に相関していた.Smad4の異常は腫瘍径やリンパ節転移と有意な相関を認め,術後5年生存が得られた6症例の全例で,Smad4は正常であった.多変量解析では,Smad4が全生存期間および無再発生存期間を規定する独立した因子であった.さらに、これら3遺伝子の異常の総数は,術後の生命予後を強く反映し(P < 0.0001),3遺伝子が全て異常な症例(33%)は予後が不良であった. [結論] 膵臓癌において,ほぼ全例で異常を認めるKRASを除いた主要3遺伝子(CDKN2A/p16,TP53,SMAD4/DPC4)の異常とその蓄積は,膵臓癌の生物学的悪性度を規定し,その評価は治療方針の決定に有益である可能性が示唆された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
膵臓癌の遺伝子異常と化学療法の感受性に関する追加検討を行う予定であったが、これまでの膵臓癌に対する化学療法は種類が限られているため、詳細な評価方法を計画中である。
|
今後の研究の推進方策 |
膵癌に対する治療方針を検討する検査として、術前にEUS-FNAで膵癌組織を採取し、遺伝子異常を評価することが可能かどうかを検討中である。 現在当院で行っている術前放射線化学療法に関連して、膵癌の遺伝子異常と術前放射線化学療法の効果との関係を評価予定である。我々のこれまでの検討から、p53遺伝子に異常を認める膵癌は局所再発が高いため、放射線化学療法がより有効であると考えられる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
EUS-FNAによる採取した膵癌の検体数が十分ではなく、追加検討ができなかったため。 術前の確定診断のために行うEUS-FNAで採取した組織で遺伝子異常の有無を評価できるか検討をすすめる。
|