研究課題/領域番号 |
24592031
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
上田 純二 九州大学, 大学病院, 助教 (90529801)
|
研究分担者 |
田中 雅夫 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30163570)
永井 英司 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30264021)
江上 拓哉 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (40507787)
宮坂 義浩 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (40507795)
冨永 洋平 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (90304823)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 膵癌 / 膵星細胞 / 線維増生 / CD271 |
研究概要 |
当研究室で樹立したヒト膵癌切除組織由来膵星細胞の表面抗原の解析を、フローサイトメトリーを用いて行った。CD29, CD56, CD105, CD271などの表面抗原の解析を行い、CD271に着目するに至った。樹立した膵星細胞12種類を解析すると、CD271陽性細胞は0.0-2.1%の割合で認めた。膵癌細胞との共培養実験では、CD271の遺伝子発現は一過性に増加した後に、減少することが明らかになった。インナーカップに膵星細胞、アウターカップに膵癌細胞を培養して行う遊走能実験では、癌細胞が存在するアウターカップの方向に遊走する膵星細胞集団が、遊走しない細胞集団よりもCD271のmRNA発現量が少ないことが明らかになった。CD271陽性細胞を、セル・ソーターで分取して機能実験を行うことを試みたが、CD271陽性細胞の割合が非常に少ないためか、安定的かつ高純度のCD271陽性細胞を十分量分取することはできなかった。次に、免疫組織化学染色法でヒト膵癌切除組織におけるCD271の発現を検討した。CD271は腫瘍の中心部分ではなく、腫瘍辺縁の間質に発現する傾向があることが明らかになった。また、臨床病理学的因子との解析も行い、CD271の発現量が高いほど予後良好であった。以上のことから、CD271は一過性のマーカーであり、発癌過程の早期に膵癌間質に発現することや、CD271陽性細胞が癌間質相互作用において癌細胞に対して抑制的に働くことが示唆された。また、リンパ管新生に関与するpodoplaninについても解析し、podoplanin陽性細胞が陰性細胞と比較して膵癌細胞の浸潤能を増強することを明らかにし、現在論文投稿準備中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵星細胞の表面抗原の解析を通して、特異的性質を有する膵星細胞集団を明らかにすることを目標に本実験を行っているが、CD271陽性膵星細胞が膵癌に対して抑制的に働いていることを示唆する成果が得られた。しかし、その具体的な抑制機序の解明にまでは至っていない。当初計画に予定してあったCD271陽性細胞を、セル・ソーターを用いて高純度かつ安定的に分取することに成功していない。
|
今後の研究の推進方策 |
セル・ソーターを用いて、CD271陽性細胞を高純度かつ安定期に分取する技術の確立を目指す。それが困難な場合は、リボ核酸干渉によるノックダウンや、強制発現によりCD271の発現量を制御して機能実験を行う。具体的には、間接共培養実験における膵癌細胞の増殖能、遊走能、浸潤能の評価を行う。既知の結果を補完する成果が得られれば、その責任遺伝子の検索も行う。また、マウスへの膵星細胞と膵癌細胞の同所共移植実験により、CD271陽性膵星細胞の腫瘍形成能、転移能などへの影響を検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
試薬類30万円、抗体10万円、リボ核酸干渉・遺伝子強制発現10万円、実験用マウス60万円、実験用ガラス器具25万円 研究成果発表:交通費7万円、宿泊費3万円 論文投稿料10万円
|