研究課題
本研究の目的は、膵癌の支持・進展に重要な微小環境を形成する膵星細胞のphenotypingを行うことで、膵癌細胞との相互作用においてより重要な働きを担っている細胞群を同定し、それを制御することによって膵癌の新規治療法開発を目指すことである。これまでにヒト膵癌切除組織由来の膵星細胞における表面抗原CD271,CD90やリンパ管新生に関与するタンパクであるpodoplaninの発現とその機能解析を行ってきた。本年は膵星細胞における表面抗原CD146に着目し、その解析を行った。免疫組織化学染色法でヒト膵癌切除組織におけるCD146陽性膵星細胞を解析すると、膵癌の前癌病変であるPanINの周囲に多く存在し、浸潤癌の周囲ではあまり発現していないことが判明した。また、膵星細胞におけるCD146の発現は、膵癌患者の予後と負の相関関係がみられた。in vitroの実験で、膵星細胞におけるCD146の発現をRNA干渉を用いてノックダウンすると、膵癌細胞の遊走・浸潤を亢進させることが判明した。これらの結果から、CD146は浸潤癌が成立した後の段階では、膵癌細胞に対して抑制的な機能を有している可能性が示唆された。また、コラーゲンゲルを使用した3D培養系を確立し、膵癌の浸潤に促進的な作用を及ぼす特定の膵星細胞の同定を目指した。コラーゲンゲル表層に癌細胞と膵星細胞を共培養すると、膵星細胞の中でも膵癌細胞に先立ってコラーゲンゲル中に浸潤し、コラーゲンの厚みと線維の配向に変化を及ぼす細胞の存在を見出した。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)
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