研究課題/領域番号 |
24592032
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
当間 宏樹 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (80437780)
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研究分担者 |
田中 雅夫 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30163570)
冨永 洋平 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (90304823)
大内田 研宙 九州大学, 先端医療イノベーションセンター, 講師 (20452708)
宮坂 義浩 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (40507795)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 膵癌 / microRNA / エクソソーム / 癌間質相互作用 |
研究概要 |
microRNA(miRNA)はmRNAに結合して翻訳を抑制し、アポトーシス、分化、代謝など様々な細胞機能を制御している。細胞が分泌するエンドソーム由来の小胞顆粒であるエクソソーム中にmiRNAが発見され、細胞間のメッセンジャーとして機能することが示された。また膵癌は豊富な間質増生を特徴とし、癌細胞と間質細胞の相互作用が癌の進行において重要な働きを担っていることが明らかとなってきた。本研究ではエクソソームを介した細胞外miRNA分泌という新たな細胞間コミュニケーションに注目し、特に膵癌における癌間質相互作用にどのような関わりがあるかを検討した。 まず膵癌細胞株におけるmiRNAの網羅的発現解析を行い、miR10aとmiR10bが高発現していることを見出した。膵癌切除標本から抽出したmiRNAにおいても両者が高発現していることを確認した。miR-10aはHOXA1を抑制して癌の浸潤を促進することを同定した。その他のmiRNAに関しても検討を行い、miR21は癌の増殖や浸潤能に関与することが知られているが、正常膵組織由来膵星細胞より膵癌組織由来膵星細胞で発現低下していた。miR31はもともと癌関連線維芽細胞で高発現を認めるが、癌由来の膵星細胞でも高発現であった。miR34aは癌の増殖抑制で知られているが、癌細胞と比較して癌由来の膵星細胞で発現の増加を認めた。 miR204はゲムシタビン治療群において高発現で予後良好であるが、膵星細胞では癌細胞と同程度の発現を認めた。 膵星細胞と膵癌細胞を共培養してmiRNAの発現変化を検討したが、上記miRNAで一定の変化は見られなかった。なお膵星細胞上清中に放出されたエクソソームを回収し解析したが、miRNAの純度が保てず正確な発現解析が困難であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
癌細胞、間質細胞におけるmiRNAの発現解析を一部行い、さらに共培養条件下での発現解析も行っている。実際に、エクソソームの回収を行い、そのmiRNA解析の手法も検討段階に入っているため、おおむね計画通り研究が行われていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
癌関連膵星細胞における網羅的miRNA解析を行い、候補となるmiRNAの絞り込みを行う。初年度に試した方法では純度の高いmiRNAが検出できなかったため、最適なエクソソーム回収方法を検討する。エクソソーム内在miRNAが癌間質相互作用に及ぼす影響についての検討として、実際に放出されたエクソソーム内在miRNAが受け手の細胞内で機能するか、癌間質相互作用の観点より癌細胞-膵星細胞間のmiRNAの受け渡しや細胞内でのmRNA抑制について検討する。また、in vivoにおいて膵癌の増殖・浸潤・転移・血管新生の誘導に影響を与えるか解析する。 バイオマーカーとしてのmiRNA定量解析の意義の検討として、マイクロアレイで同定されたkey miRNAを参考に、体液中の遊離miRNAの診断的意義につき検討する。 最近4年間に採取した膵液検体約80例を対象とし、新規に特定したmicroRNAの発現profileを作成し、膵液診断に有用なmarkerを選択する。さらに随時ERCP下に膵液を採取して、prospectiveな解析を行う。また、膵癌患者と健常人の血清中miRNAの相違についても検討を加える。膵液よりmiRNAを定量解析する技術は確立済みだが、多検体の正確な比較のため、内部標準miRNAの同定も試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
1、 複数の膵星細胞のmiRNAのマイクロアレイ解析 2、 エクソソーム抽出キットを用いて最適な回収方法を検討 3、 候補miRNAの抑制実験、強制発現実験 4、 血液、膵液中のmiRNA発現解析
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