研究分担者 |
田中 雅夫 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30163570)
冨永 洋平 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (90304823)
大内田 研宙 九州大学, 大学病院, 助教 (20452708)
宮坂 義浩 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40507795)
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研究実績の概要 |
本研究は、エクソソームを介した細胞外miRNA分泌という新たな細胞間コミュニケーションに注目し、特に膵癌の癌間質相互作用におけるエクソソーム内miRNAの役割を解明することを目的とした。 まず我々が膵癌切除組織から樹立した膵星細胞の培養上清中に放出されたエクソソームを回収して解析を行ったところ、miRNAの純度が保てずに正確な発現解析を行うことは困難であった。このため、過去に我々が報告したmiR-21, miR-31,miR-34a, miR-200c, miR-204に続いて、膵癌細胞株における転移に関わるmiRNAの解析を行うこととした。具体的には肝転移能の高い膵癌細胞株(肝高転移株)と肝転移能の低い膵癌細胞株を用いて、両者におけるmiRNAの網羅的発現解析を行った。その結果、miR-125b-5p・miR-614・miR-3178・miR-4324・miR-4706などが肝高転移株で高発現しており、miR-16-5p・miR-27b-3p・miR-192-5p・miR-194-5pなどが低発現していることを見出した。miR-16はBcl2を介してマウスの活性型膵星細胞のアポトーシスを誘導するとされ、miR-192についてもsmad-interacting protein 1 (SIP1)を介して膵癌の増殖能や遊走能を上昇させることが報告されている。また、miR-125bの抑制はBBC3・NEU1を介してGemcitabine投与下の膵癌の増殖能や遊走能を低下させることが報告されている。これらのことからも、本研究で明らかにした複数のmiRNAが癌間質相互作用、とくに転移を促進する方向へ作用している可能性が示唆された。現在、これらのmiRNAを候補として、膵星細胞との関係を解析している。今後は、癌間質相互作用の観点より癌細胞-膵星細胞間のmiRNAの受け渡しや細胞内でのmRNA抑制について検討していく。
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