研究課題/領域番号 |
24592033
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
近本 亮 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (10419640)
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研究分担者 |
岡部 弘尚 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (40573621)
別府 透 熊本大学, 医学部附属病院, 特任教授 (70301372)
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キーワード | EZH2 / ポリコーム蛋白 / 胆管癌 / 細胞周期 / アポトーシス / DZNep |
研究概要 |
【対象と方法】胆管癌細胞株に対し、siRNAによりEZH2発現抑制を行い、1.増殖能、浸潤能に与える影響、2.細胞周期(PI)、アポトーシス(PI/AnnexinV)に与える影響および、3.EZH2のターゲット遺伝子の検索を行った。4. 1993年から2010年までに当科でR0切除を施行した肝内胆管癌 45例及び肝外胆管癌41例を対象とし、EZH2の発現と臨床病理学的因子、生存予後との関連を調べた。5. 胆管癌細胞株であるRBE及びTFK-1を用いて、DZNep単独投与及びgemcitabineとDZNep併用における胆管癌細胞の増殖抑制効果を検討した。 【結果】EZH2の発現抑制により、1. 細胞増殖能は低下したが、浸潤能には変化を認めなかった。EZH2 の発現抑制により2. G1 arrestおよびアポトーシス細胞の増加を認め、3. p16INK4A、p27KIP1の有意な発現上昇を認めた。4. ヒト肝内胆管癌症例において、EZH2髙発現群は腫瘍径>3.5cmと有意に相関し、低発現群と比較すると有意に累積生存率が不良であった(p=0.045)。ヒト肝外胆管癌症例においてEZH2高発現群はリンパ節転移陽性と有意に相関し(P=0.0469)、低発現群と比して優位に累積生存率が不良であった(P=0.0017)。5. 胆管癌細胞株において、DZNep単独投与ではDMSO投与群と比して、gemcitabine/DZNep併用ではgemcitabine単独と比して、EZH2の発現が低下し、3mH3K27発現の低下も認めた。更にgrowth assayにて有意な増殖能の低下を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H25年度までの計画である、EZH2のターゲット遺伝子検索、H26年度の計画であるEZH2阻害剤による治療実験まで進んでおり、概ね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1.In vivoにおける検討:shEZH2導入ウイルスベクターを用いて、EZH2 knock down安定細胞株を作成する。これをヌードマウスへ皮下注射することにより腫瘤形成能の評価を行う。また、形成された腫瘤の薄切標本を作製し免疫染色にてEZH2、標的遺伝子の発現状況の評価を行う。 2.治療への応用の検討 H25年度までに明らかとなったポリコーム蛋白及びそのターゲット遺伝子の癌制御機構から治療への応用を検討する。EZH2によるH3K27のメチル化を阻害することで癌抑制遺伝子が正常に発現し、癌の進展が抑えられるとの仮説のもと、メチル化阻害酵素(DZNep)を胆管癌細胞株へ投与し、細胞増殖やその他現象の変化を解析する。これによりエピジェネティクス治療の臨床応用への前段階になると考える。 3.ヒト検体におけるポリコーム蛋白の変化の臨床応用 血液検査や切除標本、生検標本などのヒト臨床検体においてポリコーム蛋白の発現状況を調査し、予後不良因子や、治療抵抗性の指標としての意義を検討を行う。抗癌剤の選択や、術前化学療法の有用性など、胆管癌治療への応用を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品について、医局内保管のものを使用、及び比較的安価にて購入を行ったため。 In vivo実験及び血液検査や切除標本、生検標本などのヒト臨床検体における実験を行うための消耗品費、及び抗癌剤の購入費に充てる。また、関係書類の整理・ファイリング、倫理委員会提出書類の作成補助を行ってもらうための人件費に充てたいと考える。
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